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大崩山小積ダキ蜘蛛の糸~中央稜(宮崎県延岡市)
 
 
山行日  令和元年11月9日(土)
天 気  晴れ
メンバー  内田、鹿野(会員外)
行 程  山口~東九州自動車道~延岡~祝子~登山口5:50~大崩山荘前~湧塚分岐~小積ダキ取付7:00~登攀開始7:30~中央ベランダ~チムニー取付11:10~小積の頭14:10~大崩山荘前~登山口15:40~延岡~東九州自動車道~山口
 一年前に中央稜を登り、小積ダキの頭に立った時、もう当分の間、来ることはないだろうと思っていたが、今年の沢シーズンが終わった頃から鹿野と蜘蛛の糸ルートの検討を始めていた。
 この度、天気と相談しながらお互いの予定を調整し、再び、大崩山に向かうこととした。
 珍しく予定通りの時間に起床し、登山口を6時前に出発。暗い中、山荘前を通り、湧塚分岐を経て取り付きへ。2回目なので迷うことなく到着した。
 今回は下部を蜘蛛の糸ルートを登り、中央ベランダから上部は前回も登った中央稜ルートを辿る予定だ。準備をしてから登攀開始。まずは内田がトップでいく。
 1ピッチ目(内田)
 綺麗に上に向かって伸びるチムニー。出だしは簡単だが、チムニーに入ってから背中と足を使ってずり上がる。
 バックアンドニーとチキンウイングを多用したため、膝がぼろぼろ。掌も痛い。左上に間隔をおいてハンガーが打ってあり、ズリズリと少しずつ身体を上げるが、なかなか進まない奮闘のクライミング。
 あまりの長さに心が折れそうになった頃、右上の立木に巻いてあるスリングが見えた。その上が終了点のようだ。ようやくチムニーに終わりが見えた。
 チムニーの最後にカムをセットし、古びたスリングをそっと握って、終了点に乗り移った。
フレアしたチムニー内部
 2ピッチ目(鹿野)
 1ピッチ目の終了点からすぐ右上にリングボルトが打ってある。中央稜の下部には綺麗なハンガーが連打されていたので、これが蜘蛛の糸かと気を引き締める。
 それでも傾斜はそれほどないので、アブミのかけ替えで順調にロープを伸ばした。そのまま上部のブッシュを抜けたすぐ左に終了点がある。
2ピッチ目を登る鹿野
 3ピッチ目(内田)
 2ピッチ目の終了点から右にハンガーが見えたので、草付きのジェードルの中を登る。
 水の通り道になっているようで、岩が脆い。ジェードルはそのまま上に続いているが、左上の棚に終了点が見えた。前方にはボルトは見当たらないので、ここで左にトラバース。左の壁に乗り移る箇所が遠い。
 終了点は2人が立てるほどの小さなテラスとなっている。ここで、気がつかないうちに落石させてしまい、鹿野に当たってしまった。小さな石だったので大事には至らなかったが、注意が足りなかったと反省。
3ピッチ目終了点を見上げる
 4ピッチ目(鹿野)
 3ピッチ目の終了点から、真っすぐ上にハンガーが伸びている。安心のA1セクションかと思っていたら、ジワジワとしか進まない。思った以上に時間がかかって、ようやくコールが聞こえた。
 フォローで登って、その訳を理解した。ハンガーは必要最低限しか打たれていないのだ。中間に弱々しい灌木があるが、そこに乗り込むことが前提とされている。この灌木は一体いつまで壁に存在し続けられるだろうか。ボルトを打った人の強いメッセージが込められているような気がした。さらに灌木の上には錆び切った鉄製のボルトが打たれているが、リングボルトよりも頼りない。こんな細いボルトに全体重をかけて登らなければならないとは。
 リードした鹿野の突破力には、ただ感服の一言しかない。
厳しい人工の4ピッチ目
 5ピッチ目(内田)
 右上には太陽の光を受けた小積ダキ上部が覆いかぶさるようにそびえている。下部はずっと日陰で寒いので、早く暖かい場所へ出たいものだ。
 4ピッチ目の終了点からハンガーに導かれて頭上の岩を越える。これが小ハングかと思っていたら、カンテを右に回り込むと、一目で分かる小ハングが現れた。下はすっぱりと切れ落ちている。
 小ハングの左にカムをセットして、狭い隙間を抜ける。ザックを背負っていれば邪魔になったことだろう。そのままジェードルを進んで、岩が散乱した広いテラスに上がり込んだ。テラスの直下はボロボロで、ギアが触れただけで岩が下に落ちていった。
5ピッチ目の小ハング
 6ピッチ目(鹿野)
 目の前の3mほどの壁を右から越えると、下部は終了。そこからロープを繋いだまま、岩の合間を縫って進むと、見覚えのあるチムニーに出た。
 時間を見ると11時。ここで小休止。今のところ順調だ。
岩の合間を縫って中央ベランダへ
 7ピッチ目(鹿野)
 ここから上部は去年登った中央稜に合流し、前回とは順番を変えて登ることにする。今回、チムニーは鹿野が担当。難なく上に抜けたところで、ピッチを切って荷上げをした。
 8ピッチ目(内田)
 短い岩歩き。本来、必要ないのかもしれないが、お互いに前回登っていないピッチを登るため、ここでピッチを切った。
 9ピッチ目(鹿野)
 上部のポイントの一つであるワイドクラック。自分はかなり奮闘した記憶があるが、鹿野はするするとロープを伸ばし、間もなくビレイ解除のコールが聞こえた。今回は荷上げも上手くいった。
順調にワイドクラックを抜ける
 10ピッチ目(内田)
 ここも鹿野に申し訳ないくらいに何もないピッチ。岩穴をくぐったところが下の窓で、眼前に素晴らしい光景が広がる。
 11ピッチ(鹿野)
 ここから高度感の溢れるクライミングとなる。鹿野が器用にクラックを辿って登り、ジェードルの中の終了点でピッチを切った。
 水の通り道になり、年々、風化が進むのだろう。フレークが不安な音を立て、脆くなった箇所もあった。
 12ピッチ目(内田)
 そこから少し登ったところが上の窓となる。
 さらに一段上がって、錆びたリングにアブミをかけて右トラバース。トラバース後の草付きジェードルが気持ち悪い。
気持ちの悪い草付きジェードル
 13ピッチ目(鹿野)
 腐ったリングボルトを支点として右トラバースした後、左上の浅いジェードルに入る。
 ホールド、スタンスが乏しく、土の詰まったクラックにセットしたカムを頼りに登るが、フォローでも厳しい。精神力が試されるピッチ。
最後のジェードルも厳しい
 14ピッチ目(内田)
 最終ピッチはアブミを使ってスラブを登る。難易度は下がるが最後まで気を抜かないように。終了点から右に回り込めば、小積ダキの頭だ。
 一年前に続いて今回も無事に小積ダキを抜けることができ、鹿野とがっちり握手を交わす。下部から上部まで緊張感は途切れないが、今回はお互いに登攀を楽しむ余裕があったように思う。ギアを片付け、しばらく余韻に浸った後、登山道を駆け下りた。

今回の蜘蛛の糸から中央稜へと繋げるルートは、下部から上部を通じて気の抜けない登攀が続く。自分のような者が言うのもおこがましいが、三浦さんが九州を代表するルートだと言ったことが分かる気がした。初登者、そしてルートを整備してくださった方々に敬意を表したい。
(文:内田、写真:鹿野・内田)
      
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