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大日岳 (飯豊連峰 新潟県)
 
イイデリンドウ
 
 
山行日  2019年7月31日~8月1日
天 候  7月31日 曇り   8月1日 晴れ
メンバー  斉藤(宗)  斉藤(滋)
行 程  7月31日
御西小屋(5:15)~ 大日岳(6:58)~ 御西小屋(8:50-9:27)~ 御西岳 ~ 飯豊山(12:00-12:18)~ 切合小屋(14:45)泊
 8月1日
切合小屋(6:00)~ 三国小屋(8:17-8:40)~ 疣岩山(9:46)~ 松平峠(11:30)~ 祓川駐車場(14:20-14:40)~ 大阪屋(15:00)泊
 7月31日

 午前4時、単独行らしい男性がコンロに火を点け、朝食の準備を始めたようだ。御西小屋の狭い2階フロアーの利用者は6人、広々と休む事が出来た。夏山シーズン真っ盛りの山小屋とは思えない静けさだ。
 我が家も起き出して大日岳ピストンへの準備を始める。余分な荷物を纏め小屋に置かせて頂こう。先ずはエネルギー補給をとパンを口にするが噛んでも噛んでも喉を通らず水と一緒になんとか飲み込む。下界ではいつも食欲旺盛な私だが、やはり疲れているのだろう。
 出発準備完了、期待を込めてドアを開ける。残念! 濃い霧は昨日のままだ。「行ってもこんな天気なら、しょうがないなぁ。止めるか?」とM。「いや、行きたい!今日に限ってピークハンターになる」と即抗議する。12年間も宿題を抱えて来たのだ。例え何も見えなくったって大日岳山頂に立ってみたい。人それぞれの山の楽しみ方があると思うが自分は決して《ピークハンター》ではない(と思っている)ふと7年前の秋に登った大朝日岳避難小屋での出来事が思い浮かぶ。あの時は一日中雨が降り続く中やっと小屋に辿り着いたが、翌日もまた雨だった。同宿者7人の内、我が家以外の5人は降りしきる雨の中さっさと下山、みなさん百名山登頂が目的だったらしい。だからと言って雄大な景色を眺めないままの下山なんて、自分には出来ない登り方だと思ったものだ。が今、とにかく登頂さえ出来たらそれだけでいいと必死の自分がいる。何も見えなくったっていい・・・大朝日岳のみなさんの気持ちが、今になってよーく分かる。
ミヤマクルマバナ
 荷が軽いのでそこそこのペースで進める。数週間前までは残雪のためアイゼン、ピッケルは必携だったらしい。濃い霧で視界不良のため、どの辺りを進んでいるのかさっぱり分からない。
 いつかテレビで見た文平ノ池を眺めるのが一番楽しみなのに一向に現れない。加藤隊は見る事が出来たのだろうか? 尾根歩きから急斜面のトラバースとなり慎重に進む。と霧の中から突然下山者が現れ双方びっくり。訊けば山頂まで10分位で着くそうだ。「意外と早く着いた」との事だが我が家より少し早く小屋を出られたようだ。よーし! 後少しの頑張り、最後の追い込みだ。と「着いたぞ!」と霧の向こうでMが呼ぶ。段々と近づくと見えて来た一本の地味な標柱、Mがしっかりと手を添えている。私も入れ替わってハイタッチ! それから2人で無言の握手、敢えず記録写真は撮っておこう。あれ程恋い焦がれ気合を入れて挑んだ筈なのに、殺風景で寂しい大日岳山頂はなんだか呆気ない。滞在時間はわずか1分(?)さっさと踵を返す。朝の「行っても・・・しょうがないなぁ」のMの一言が浮かんで来る。
大日岳を下る。 残雪期は厳しそう
 
 登りに比べ下りは楽しい。登頂の安堵感からか其処かしこに咲く花々がやたら目につく。昨日までは(いや、さっきまで)中々カメラに手が行かなかった。目標達成で、ようやく撮りたくなって来た。
 霧のベールの向こうに広がるニッコウキスゲの花園、加藤理事長からメールで探してみてと連絡があったイイデリンドウの変種か?他にも赤、黄、白、紫、朱色と様々な花が咲き揃っていて夢中でシャッターを押していく。
 文平ノ池への分岐らしきにも気づくが濃霧のためスルーし御西小屋に帰り着く。数張りあったテントはすっかり消え管理人さん以外誰もいない。ザックの荷を詰め替え出発準備は完了、お世話になった小屋を後にする。
アオノツガザクラの群落
 ゆっくりと登り返し草月平までやって来る。一面のニッコウキスゲも間もなく盛りを過ぎるだろう。Oさんが「せっかく本山まで登ったのなら大日岳まで頑張れば良かったのに」と言った意味が良く分かる。もちろん最高峰登頂の意義もあるだろうが、このお花畑を見せたかったに違いない。いったい何種類のお花を見ただろう? 一番人気(?)はやはり《イイデリンドウ》かな?
 12年前「イイデリンドウは夜閉じる」と聞き「早く下山しないと飯豊林道は、夜閉るから帰れなくなるよ」と勘違いした私、Mは未だに口にする。加藤隊が見つけたイイデリンドウの変種ってどれだろう?(これか?と撮りまくった花びらが多めのリンドウは、帰宅後、ミヤマリンドウと知る) 
白いヨツバシオガマが咲いていた
 飯豊本山の登りにかかると青空が覗いて明るくなる。めったに出会わない登山者とすれ違うと「ニッコウキスゲは咲いていますか?」と訊かれる。「見事ですよ」と答えると「じゃあ、そこをゴールにしましょう」とガイドさん(?)「うわー 楽しみ!」と熟年の女性3人は大喜び。みなさんのお目当てはやはり草月平のお花畑だ。
飯豊本山への登り
 本山山頂はまたも霧がかかっている。本山小屋を過ぎるとやっと霧が薄らぎこれから下る稜線が見え始める。
 御秘所の岩場を慎重に降り草履塚に登り着くと今日のゴール切合小屋はもう近い。ようやく帰れたと気が緩み大幅にペースダウン、トロトロ歩いているとMが立ち止まって待っている。無言で向けた視線の先には・・・「シラネアオイ?!」今まで写真でしか見た事がなかった本物(偽物なんてないが)のシラネアオイが咲いている。初めて目にして大興奮。見つけてくれたMに「有難う!」を連発する。
シラネアオイを見つける
 「早かったね」と佐藤さんに笑顔で迎えられる。明日は下山だけ、温存していた衣服に着替えさっぱりする。
 5時、夕食のカレーが美味しい。気軽におかわり出来るのでたくさんの人がおかわりしている。Mはカレー+冷え冷えのビール)+清酒菊水で超ご満悦。出来上がって6時にはする事もなく横になる。「斉藤さん」誰かに呼ばれ目が覚める。「大日岳が見えているから外に出て見て」小屋の佐藤さんがわざわざ起こしてくださったのだ。
 「せっかく大日に登ったんだから見ておかないとね。今見えているから」と裏のキャンプ場に案内される。歩いた稜線は雲の中だが端っこに見えるピークが大日岳だそうだ。「頑張って登ったんだから」温かい佐藤さんの言葉に寂しかった標柱だけの山頂が思い浮かぶ。
大日岳夕景(佐藤さんと)
 飯豊山4日目、初めて朝から青空が広がっている。だが何故か大日岳には雲がかかっている(結局、見えたのは昨夕のみだった)今日は下山だけだが結構時間がかかりそうだ。
 小屋を出てすぐ、大日杉小屋へのコースを左に分ける。すぐ下の沢の周りはあの時の様にハクサンコザクラがいっぱい咲いているかな? 登りでは気づかなかった花がそこかしこに咲いている。飯豊山はお花の山だと改めて思う。三国小屋を過ぎ、雷に脅された稜線を行き、松平峠まで下る。もうヘトヘトだ。更に下った水場で一息つき、気力を振り絞ってMの後を追う。覚悟はしていたが疲労で《飯豊はもういいで》と冗談でなく、心底思う。
 
歩いた尾根を振り返る
 6日ぶりの宿の風呂で生き返る。大阪屋さんは由緒ある宿(ネットから)と建物の柱一つでも感じ取れる。奥様の手料理一つ一つのなんと美味しい事か。ネマガリ竹、蕨、蕗など山菜の優しい味に食欲が進み疲れがいっきに飛んで行く。不安を抱えながらも挑戦した飯豊。どうにか登る事が出来た。お世話になった方々への感謝の想いでいっぱいだ。
( 文:斉藤(滋)  写真:斉藤(宗) 斉藤(滋) )
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