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鹿納谷(宮崎県鹿納山系)
 
 
 
山行日  2019年8月3日(土)
天 候  晴れ
メンバー  宮田、内田
行 程  山口~東九州自動車道~延岡~鹿川~駐車地点~入渓7:30~宇土内谷出合8:05~鹿納谷~出渓13:40~林道~駐車地点15:20
 クライマーの楽園「鹿川」の奥に素晴らしい沢があると聞いたことがある。その名も鹿納谷。ずっと行ってみたいと思っていたところ、今回、宮田と日程を調整し、宮崎県に向かった。
 金曜日の夜に山口を出発。東九州自動車道を使って延岡へ。鹿川手前の比叡山の駐車場にテントを設営し、肴抜きのささやかな宴の後、就寝した。
 翌日、目が覚めると既に6時だったので、慌ててテントを片付けてから出発。
 鹿川の集落を抜け、林道を進んだ空地に駐車した。すぐ下には沢が見える。天気は快晴で、今日は暑くなりそうだ。はやる気持ちを抑えながら、準備をしてから入渓。
 沢に降り立つと、いきなり中国地方とは異次元の空間が広がった。とにかく存在感のある真っ白な花崗岩の一枚岩の上を、清らかで透明な水が流れている。
 平水時の水位は分からないが、決して水量は多くはなさそうだ。思わず泳ぎで取り付き、岩床に乗り上がる。水温も低くなく、白い花崗岩にはラバーソールが吸い付くように効く。気分は最高!!!
白い花崗岩の一枚岩と清らかな水
 ひと歩きですぐに自然の物とは思えない巨大な滑となる。気分を高揚させながら、朝日に照らされた滑ロードを進むと、目的の分岐が現れた。
 右俣には堰堤がかかっている。左俣の岩の上にあるのがトロッコ軌道の橋桁なのだろう。間違いない、ここが鹿納谷の入口だ。
広大な滑ロード
 
 すぐにゴルジュとなり、滝が現れる。横を歩けば楽にパスできるのだが、もちろんゴルジュの中を進む。宮田が泳いで取り付き、テクニカルなムーブで突破。お見事!
 その後、ゴルジュはさらに深くなり、その奥には行く手を阻むような滝がかかっている。一見して登ることは難しそうだ。それでも、近づいて観察すると、滝の手前左岸の岩肌にボルトが打ってある。増水時には想像もできないほどの水や岩が流れ込むのだろう。ボルトのハンガー部分が曲がっている。有難くボルトを使わせてもらい、アブミで抜けた。ボルトがなければ、手も足も出ない。
ゴルジュの奥で行く手を阻む滝
 その後も滝が続くので、ロープは出したまま進む。
 大岩のチョックストーン滝は、ラバーのフリクションを信じて右岸のスラブを進み、支点を取ってから奥に抜けた。宮田が安定のクライミングを見せる。
スラブから大岩の奥へ抜ける宮田
 次に現れたのは不思議な岩の造形美だ。まるで現代アートのような空間の奥に滝がかかっている。ここも宮田がトップで、左岸に打たれたボルトを使ってアブミで越えた。
まるで現代アートのような岩の造形
 その後も次々に出てくる滝を越えていくと、くの字に曲がったスラブ滝が現れた。その滝の上には大釜を持った滝が続いている。
 右岸に連打してあるボルトを使って、水流左のクラックに沿って登る。上の大釜には入らず、そのままスラブを通って上の滝の落口左に抜けた。
くの字スラブ滝
 スラブ滝の先はゴルジュとなっており、何かありそうな雰囲気だ。フォローの宮田を迎えて恐る恐る先へ進むと、滑らかな岩肌に囲まれた釜の奥に高さのある滝が見えた。両岸とも手掛かりは全くなく、登攀の可能性はない。
 ふと見ると、滝の手前の右岸のスラブにボルトが連打してある。これを使えば上に張り出した岩の下を通って、滝上までトラバースできそうだ。
 数少ないヌンチャクを節約するため、ボルトを間引いて登り、張り出した岩の下まで達した時、その先に延びるボルトの数を見て、絶望感に襲われた。手持ちのヌンチャクが圧倒的に足りない。撤退が頭をよぎり、しばらくの間、逡巡するが、意を決しルビコン川を渡る。
 頭をかがめ、這うようにして、岩の下を進む。足元は濡れたスラブで、ツルっと滑りそうで緊張が途切れない。ヌンチャクが不足するので、アブミのカラビナも使って、ロープを伸ばした。カムやスリングなど、手持ちのギアを総動員し、苦労して滝横の岩に乗り移ったところ、有り合わせのギアを使ったためにロープの流れが悪くなって、ついにそれ以上進めなくなってしまった。
 こんなところでと思わず泣きが入るが、仕方が無いので、張り出した岩の下まで宮田に登ってきてもらうと、ロープの流れが復活。最後はボルトにカムのカラビナで支点を取りながら、ヘロヘロになって、滝横の岩を越えた。思わず、久しぶりにシビアなクライミングとなってしまった。
左上の張り出した岩の下をトラバースした
 沢は再び開放的になり、陽を浴びながら遡行を楽しむ。白い岩と青い水のコントラストの美しさは言葉で表現できないほどだ。また、その後もいくつかの滝でロープを出したが、適度な登攀性があってとにかく面白い!
 花崗岩の素晴らしさを味わいながら、気持ち良い泳ぎやシャワークライミング、恐怖のスラブのトラバースなど、最後まで現れるイベントをクリアしていくと、左岸上方に林道が見えてきた。少し先まで様子を見た後、名残惜しいが、ここで出渓することにする。
 
シャワーで取り付き、目論見通りのラインへ
 ジリジリと暑い中、ガレた斜面を上がり、林道で装備を解除。そこから林道を下る。適当なところから鹿納谷と宇土内谷の出合付近に降りるつもりだったが、下降地点がよく分からなかったため、もっと先まで歩いて、直接、駐車場所に降りることにした。
 林道を外れてからしばらくの植林帯は下草もなく、快適に歩ける。途中、左の沢に誘われてしまったが、GPSのおかげで迷うことなく駐車場所に辿り着いた。最後、車が見えてからのカヤといばらの藪漕ぎが長かった。
 
トラック図(鹿納谷)
 この日の宿は庵鹿川へ。三沢さんをはじめとする庵のメンバーの方々と楽しくお酒を酌み交わす。偉大な先輩方の話は話題も豊富で面白い。庵の皆さま本当にお世話になりました。
 念願だった鹿納谷。事前に記録に目を通してはいたが、実際に行ってみて、これほど素晴らしい沢だとは思いもよらなかった。天気にも恵まれ、最高の気分で沢登りをさせてもらいました。感謝!!!
( 文・写真 : 内田 )
   
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