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丸山(東壁・緑ルート)
 
日 時  2018年7月20~21日
天 候  晴れ
メンバー  高田・林
行 程  20日
 07:30扇沢駅発→07:40 黒部ダム着 →09:30 内蔵助谷出合テント設営→10:00 緑ルート取り付き→16:00 7p目中央ドーム到着→ホテル丸山チェックイン
 21日
 04:30起床→05:20ホテル丸山チェックアウト→05:407p目取り付き→08:00ハング上到着→懸垂→ホテル丸山→懸垂→09:45緑ルート取り付き到着→テント→13:00黒部ダム→扇沢駅
 朝5時ごろ扇沢駅に到着。高田さんと二人で交代しながらの運転で、若干の寝不足気味。陰っているのでこの時間は結構涼しい。準備をして始発のバスを待つ。始発は7時30分、最初は少なかった人も、出発時間になると3台のバスが一杯になるぐらいの人が来た。平日なのに人は多い。
 黒部ダムについて、下の廊下方面へ急斜面を降りる。河原の木の橋を渡り、右岸から左岸へ。黒部ダムの放水された水が霧となって降りかかり、とても涼しい。日向はもう十分暑いぐらいだ。

 小一時間ほど左岸を歩き、内蔵助谷の出合に到着。
 テント場までは登りと下りの分かれ道を上に行くと割とすぐだ。看板の裏の空き地にテントを張る。そこから更に登山道を上がり、遠かった沢が近づいて、白い岩のゴーロ帯となったルンゼが左に見えたらここを登山道から外れてルンゼを詰める。
 赤いペンキで、登山者が間違ってルンゼに入らないように岩にバツ印書いてあるのでこれを目印にするとよい。これから登る岸壁が一望できる。また、ここで沢水が汲める。大変に冷たく、気持ちが良い。
  ルンゼを詰めて、これから登る緑ルート方面へと踏み跡を頼りに藪を漕ぐ。風もなく、大変暑い。これから明日の昼まで水の補給は出来ないのでうかつに水は飲めない。あまり荷物を重くしたくなかったので、水は3Lしかないのだ。

 取り付きについた時点で、既に少し暑さにやられている感じだった。昨日の寝不足もあるのだと思う。これから、後ろからは太陽に照らされ、前は岸壁からの照り返しを受けて登るのかと思うと、少し憂鬱となった。壁に登れるのかどうかの不安よりも、熱中症にならないかの心配の方が強い。しかしこんなことで弱音になってはいけない。高田さんとジャンケンをして、どちらから登るかを決める。高田さんが先行だ。
東壁全景。ハングが特徴的
 1p目、最初のリングボルトまでが少し遠い。スラブになっているし、嫌らしい感じだ。
 フリーのグレードは10bだったので、行けるところはフリーで行こうと考えていたが、暑いし、時間はかけてはいけないし、そこまで簡単ではないという事で、遠慮なくアブミ登攀。まだ垂壁というよりも、壁は寝ている感じなので、リングボルトの間隔が遠い所がある。こういう時に少しフリーになるのだが、アブミになれた足先にフリーの細かいスタンスは怖く感じる。
 リングボルトに導かれて終了点まで。終了点もお世辞にはしっかりしているとは言いづらい。全体を通して、終了点はリングボルト・RCC・ペツルの古いやつの混合といった感じです。残念ながらピカピカのペツルは無かったです。
1p目を登る
  2p目は、終了点からリングボルトに誘われて直上して藪に突っ込んでみるが、藪から上が支点は全くないし、壁が苔に覆われている。どうやらこれは違うルートみたいだ。なんとかアブミを使ってクライムダウンして終了点まで戻る。
 そこから左にリングボルト2本使ってアブミトラバースをして、支点に導かれて直上。所々に古い終了点のような物が見えるが、どれを選ぶかの選択に迫られる。出来ればロープは多く伸ばしたいし、ちゃんとした終了点で終えたい。
 結局、ロープの長さがギリギリのところで、三日月ハングから30mぐらい下の大きなテラスに到着。
2p目のテラスから
 3p目、トポでは三日月ハングの下までだったが、ロープも充分に長さがあるという事で、高田さんがハングの上までロープを伸ばす。慣れた手つきで、アブミの架け替えとレスティングフィフィで確実にハングを越えていく。
 セカンドでハングに取り付く。ここをスムーズにいけないようでは、上の大ハングは諦めた方がいいとネットに書いてあったのでどんなもんかいなと思ったが、意外とスムーズに行けた。ハングの直ぐ上でピッチを切る。
三日月ハングを越える
 4p目、この辺りから壁は垂直。リングボルトがきれいに一直線に上に続いているのが見える。どれも、アブミの最上段に立ってようやく次のリングボルトに届くといった間隔だ。
 リングボルトに抜けないように心の中でお願いをして、じわりと立ちこむ。最上段に立ちこむときはバランスが要求される。腰を壁に押し付ける。絶対に落ちるわけにはいかない。フィフィを使ってリングボルトをアンダーのように使って立ちこむのも練習したけれど、それはそれで不慣れなので逆に怖いのでやらなかった。事前に調べてはいたけれど、ここでチョンボ棒を使えばかなり楽が出来るのだと思う。
  
 ヌンチャクは二人で30本用意していたけれど、すべての支点で使っていたら足りるかもわからないので、適度な感覚で間引いていく。おじぎをしているリングボルトも多い。今にも抜けそうな物の隣には真新しいリングボルトが打ってあったが、数本ぐらいだ。
 ここでもロープがギリギリで、(残り2mぐらいだった)足の横幅ぐらいのテラスに到着。
ボルトラダー
 5p目、再び直上。
 一段広いテラス状について、そこから更に直上を試みるも支点が全くない。右か左か迷い、右を選択。高度感のある、嫌らしいトラバース。上手くハーケンを見つけないと怖い。ハーケンに導かれ、リングボルトに導かれルンゼ状を登るが、岩がかぶったり、ところどころでフリーになって、なかなかここもイヤらしい。大バンドらしき大藪に到着し、ここで一度ピッチを切る。

 6p目、大藪の中を、足を滑らせないように登る。なんとなく踏み跡っぽいのもある。すぐにガレ場になり、終了点があったのでここで切る。トポ図より1p少なく大バンドに到着した。
 時間は16時、いつのまにか太陽は丸山の山頂で隠れて陰にはなっていたが、残暑が十分に残っている。
 本日の登攀はここでやめて、ホテル丸山と呼ばれる洞窟のような岩の影で今日は計画的ビバーク。すぐに横になる。
 僕はザックを敷くぐらいしか考えていなかったが、高田さんは小さなマットを持ってきていた。流石である。

 とりあえず休憩。二人とも暑さに結構やられていた。残りの水は僕は1.5Lぐらい。本当はここでガブ飲みしたいぐらいだったが、明日の為にも500mlで我慢する。高田さんは結構残っていた。
 このバンドで、岩から滴り落ちる水で喉を潤したという記録もあったので、バンドを探し回ってみる。たしかに結構滴っているところもあったが、器を置いて水を集めることはできなかった。更に水量の少ない所で器を置いて水を集めたが、集めれたのは一晩で100mlぐらいだった。しかも不純物だらけ。浄水器を持ってくればよかった。携帯の電波はバリバリ入っていた。
ホテル丸山でくつろぎます
 夜になって、なんとなく黒部ダムの方の明かりが見えた。高田さん曰く、目の前のギザギザの山の頂上にも明かりが見えたという。翌日調べたら、鳴沢岳という名前の山で、山小屋があるようだった。
 なかなか肌寒いので、二人でツェルトにくるまった。僕は薄いダウンを着て、高田さんは上下カッパを着込んだ。足が寒くて何度か目が覚めたが、前日の寝不足もあって熟睡出来たと思う。
 4:30起床。もう十分明るいぐらいだ。太陽もまだ山に隠れていて肌寒い。今日も暑くなりそうなので、早めに出発。朝一のクライミングシューズは憂鬱だ。足先が冷えているし、アブミ登攀で足先はかなり傷みつけられているからだ。
 空身で、念のためホテル丸山からロープを繋いで7p目の取り付きへ。(トポでは8p目になる)

 念のため取り付きでセルフビレー。リングボルト二本で流動分散で取ったら、片方のリングが音もなくポロっと取れた。朝から縁起が悪い。
 7p目、カンテ状をボルトラダーで登る。
 リングボルト・ハーケンは豊富で、間隔も近い。登り始めてすぐに太陽が照り付けてきて、早速暑くなってきた。朝から暑さは容赦なく、昨日の暑さを体が覚えているみたいで、もはや拒絶反応に近いが我慢するしかない。
 ハング手前でピッチを切る。錆びたペツルとリングボルト、ハーケン等、念のため5つの支点で支点構築。

 8p目、いよいよ大ハングだ。
 左上するように、ここも支点に導かれるように登る。もはや作業に近い。アブミを掛けて、フィフィで体をひきつけて、アブミを架け替えて、次の支点にアブミを掛けて・・を繰り返す。フィフィが引っかかって取れなくなる事には気を付ける。
 高度感が凄い。ハングした支点にかけたアブミに足を乗せるときは、完全にぶら下がったような状態で、足元はキッパリ切れ落ちている。体が回らないように片足で体を固定する。
大ハングを越える高田さん
ハング手前でビレーする林
 ハングを越えて、再び垂壁となり、若干のフリーを交えて終了点に到着。沢山の残置スリングがあって、お祭りみたいだ。

 次のピッチからは木登りとの事。確かに木が茂っている。僕としては、もうハングも越えたし満足したので、ここで終了とすることを提案。早く降りて、冷たい沢にダイブしたい気持ちも強い。高田さんも納得してくれた。
 先ずは大バンドまで50mの空中懸垂。こんな懸垂は初めての経験だ。ロープにぶら下がって見る景色はまた一際違う。ホテル丸山にデポしていた荷物を回収して、登ってきたところを懸垂。僅かな時間で取り付きまで戻ることが出来た。高田さんと熱い握手を交わし、沢へと向かう。
 沢の水は冷たく、めちゃくちゃ美味い。昨日の昼間から考えていた沢へのドボンも実行に移したが、逆に水が冷たすぎた。十分な休息を取って、テントも回収してゆっくりと黒部ダムへ帰った。
50mの空中懸垂
 A2を含めて、ボルトラダー主体の人工登攀は初めて。人工登攀は作業だと感じました。その作業の手順さえ間違わなければ、スムーズに登れることが分かった。作業といっても、アブミの最上段に立つのがバランシーで面白かったです。チョンボ棒は大変有効だと思います。
 アブミは、少し重くても全段プレートが入っている方がいいと感じました。足が入れやすいのはもちろんのこと、同じ段で足を入れ替えれるのが有効だと思います。
 アブミに乗っていると、どうしても足先が壁に擦り付けられるようになって、足先が痛くなるので、自信のある人は、時々出てくるフリーが怖いと思いますが、登山靴で登ってもいいのかと思いました。
 長い懸垂下降続きで、エイト環とATCを交互に使う工夫もしましたが、下降器は持てないぐらい熱くなりました。僕の懸垂グローブは指先がないので下降器からロープを取るのに苦労しました。グローブはちゃんと指先まである物で、しっかりと厚い物が良いと分かりました。
 
 何より、核心は暑さでした。暑い中付き合っていただいた高田さんに感謝です。次回は、もっと涼しい時期に登りに行きたいと思いました!行けばの話ですが。
(  文:林、 写真:林、高田 )
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