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傾山~大崩山縦走(後編)
 
山行日  2017年11月2日(木)~6日(月)
山 域  傾山~大崩山(大分県・宮崎県)
天 候  11月2~5日(晴れ)
メンバー  浅原CL、石井SL
ルート  (九折)駐車場~傾山~杉ヶ越(テント泊)~新百姓山~桧山~夏木山~五葉岳~お姫山~鹿納山~権七小屋谷分岐付近(テント泊)~(テント等を残置し大崩山を往復)~大崩山~鹿納の野~五葉岳~兜巾山~見立鉱山採鉱所跡(テント泊)~かもしかの森~九折越~(九折)駐車場
行 程  5日:
 起床・朝食(4:03)~権七小屋谷分岐付近発(5:04)~大崩山(8:07)~鹿納の野(13:30)~五葉岳(14:44)~兜巾岳(15:37)~見立鉱山採鉱所跡・テント泊(19:16)
 6日:
 起床・朝食(5:45)~見立鉱山採鉱所跡発(7:10)~かもしかの森(8:08)~九折越(12:03)~(九折)駐車場(14:28)
 5日朝
 この日は今回の山行で一番長い距離を歩く予定のため、朝早くに起床する。
 テントを出ると周囲はまだ暗く、空には満天の星空が広がる。周囲は山、頭上には星空が広がり、自分達が大自然に抱かれているという気分になり、非日常感を全身で満喫する。

 大崩山山頂を踏んだ後再び戻ってくるため、テント内に不要なものを残し、荷物を軽くして歩き始める。荷が軽くなっても周囲はまだ暗く、ヘッドランプの明かりで踏み跡を探しながらの行軍のため、スピードは上がらない。
 途中何度か道を間違えそうになりながらもなんとか先へ進む。日が昇りようやくヘッドランプの明かりがなくても周りが見渡せるようになると、目の前に広がるのは木々が朽ちて荒涼とした荒野であった。
 人や動物の気配もなく物寂し気な縦走路を進む。ここまで歩いてきた道は木々が覆い茂り自然のエネルギーのようなものを感じながらの行軍であったが、このあたり一帯は一転し、歩くだけで気が滅入りそうになるような雰囲気に覆われていた。植林を進めているとの標識もたっていたが、次にここを訪れる際はぜひとも緑が覆い茂り生き生きとした中を歩きたい。

 何度か尾根を上ったり下りたりして、大崩山山頂にたどり着く。山頂には誰もおらず、日が差し始め、目覚めゆく山々の様子をゆっくりと眺めることができた。昨日の五葉岳山頂とはまた違う角度から、九州南部に連なる峰々を時間を忘れて眺めていた。
大崩山山頂からの眺め
 大崩山からの眺めを満喫したのち、来た道を引き返す。途中他の事に気を取られ、石井に言われるまで別の尾根を下っていることに気が付かずにいた。これが単独行だったらと思うとゾッとする。
 正規ルートに戻り、先ほど誤って下りかけていた長い尾根筋を眺めながら、気を引き締めた。
 テン場までの戻りは、こんな坂道を下ったのかと思うほど長い登りが続く。縦走三日目だが、まだ水場での水の確保もできていない。天気がいい日が続き水の使用も多い。石井から先に行って水の確保を頼まれる。
 初日の杉ヶ越とは違い、日も高く水場への入り口はすぐに分かった。テン場のすぐ近くに水場へ続く目印があり、急傾斜のがれ場を慎重に下る。
 大岩がごろごろと積み重なっており、踏み外すとただでは済まなそうだ。ここ最近雨もなく沢水が枯れていないか心配であったが、心配をよそに下っていくと沢を流れる水の音がする。水はこんこんと湧いており、すぐに水筒がいっぱいになり、心まで満たされる。
 そのまま来た道をまた慎重に登り返しテン場につくと、既に石井がテントの回収を始めていた。テントの回収後、行動食で胃袋を満たし、一路五葉岳を目指す。昨日と同じ道を通っているはずなのにまた別の道を歩いているような錯覚に陥りながら、鹿納山一帯の危険地帯を抜ける。
水場
 五葉岳山頂も昨日と違い無風の状態で、まだ日も高く、360度広がる絶景を思う存分堪能し、兜巾山に向かった。
 兜巾山までは藪漕ぎに近い道もあったが、ところどころに標識が立っており道に迷うこともなく山頂までたどり着く。開けた山頂でこれから下る尾根や傾山山頂もよく見えた。
 しかし大変なのはここからだった。足場は悪く、手がかりの少ない急傾斜を慎重に下る。地図上では実線が引かれているが、破線(難路)の間違いではないかと何度も頭を傾げた。
 日も傾き始めた頃ようやく傾斜も緩やかになる。周囲には採鉱所の面影が至る所に残っており、トロッコの線路やトンネルなどが現れる。トンネルの中には水が溜まっていて奥は暗く、先には進めそうだがどうなっているのか目視にて確認することはできなかった。さらに下ると沢沿いを通る道に代わる。岩から岩へ踏み外さないように慎重に進む。
 日は完全に沈みヘッドランプの明かりだけを頼りに進むが、GPSで現在地を確認すると、上見立の登山口はまだまだ先だ。疲れから頭はスリープモードの切り替わり、何も考えずもくもくと歩いた。道中、神社の鳥居らしきものや鉱夫たちの働いていた頃を忍ばせるようなものなどがあったが、今は一刻も早くここを抜けたいという一心で足を止めることもせず先を急いだ。
 何度同じような場所をぐるぐる歩いたかと錯覚するほど似たような場所を歩いた。すぐ横からはゴーっという沢の音と共にものすごい勢いで水が流れており、気を抜くとそのまま落ちて沢に飲み込まれるのではないかという恐怖と隣り合わせの状態に、この状態がずっと続くと思うと気持ちがおかしくなりそうだった。
 沢沿いを下り始めて何度目かの休憩をとったのち、石井と相談し沢沿いの比較的安全な場所でビバークすることにした。人生初のビバークであったが、比較的開けた場所であったおかげで、ツェルトを被るのではなくテントを張って中で横になることができた。
 6日朝
 この日も穏やかな朝にビバークしていたことを忘れかけていたが、沢の音にすぐに現実に戻される。
 しかしテントの外にはい出てみると、広い道が続いており、昨日の恐怖がうそのようであった。またすぐ目の前の木の枝には目印のテープも付いており、登山道から外れていないことを確認でき一気に力が湧いてきた。
 朝食を食べ準備を整え、昨日歩く予定だった上見立の登山口までの道を進む。明るい登山道は安心して歩くことができ、途中何か所か渡渉する箇所もあったが、問題なく抜けることができ、しばらくすると舗装された道まで戻ることができた。しかしもし単独行であれば、昨日あの時点でビバークを選択できたのか自信はない。自分の経験のなさを実感したが、同時に登山に対する引き出しが一つ増えたことに今回の山行のお土産ができたように感じ、足取りも軽くなった。

 舗装された道を進み見立へ向かう。舗装された道に安心感を覚えたが、舗装路の硬さに早く登山道についてほしいという思いが交錯する。
 昨日幕営予定だった見立のかもしかの森キャンプ場を抜け、舗装路の上り坂をしばらく進むと、九折越に至る登山道に着く。ここからしばらくは沢沿いの道が続く。しかし昨日の兜巾山からの下りとは違い危険を感じるような渡渉もなく、また九折越まで登れば、後は駐車場まで下るのみという安心感から時間を気にせず休憩をとりつつゆっくり歩を進めることができた。

 ちょうど正午になる頃九折越にたどり着く。右手には傾山山頂が顔を出していた。五葉岳山頂からみたそれとは形も違い別の山を見ているような気分になった。
 平日ということもあり、一人の登山者ともすれ違うことなく静かな九折越を後にし、駐車場に向かって歩き始めた。九折越から駐車場に至る道は初めて歩くが、始めはその名の通りつづら折りの単調な下り坂であったが、沢が姿を現すと一変し、きれいな沢を渡渉したり変化に富んだ山道を楽しむことができた。
 駐車場までの標識が現れ始めると、長かった縦走もあと少しという事実が頭をよぎりだし、歩き始めてからここまでの出来事があれこれと浮かんでは消えていった。
 今年は天候不良などで長く山に入ることができなかったが、今回の山行では久しぶりに長い時間を山の中で過ごすことができ、日常生活を離れ、不便さを不便と感じず当たり前として過ごせるようになった。やはり年に何回かは長い時間を山の中で過ごしたい。早速また次の行程を考えることにしよう。
トラック図:傾山~大崩山縦走
( 文/写真/トラック図:浅原 )
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