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立山・仙人池・水平歩道 縦走の旅 その③
日 時  2017年10月5日(木)~6日(金)
山 域  (仙人谷~雲切新道~阿曽原温泉~水平歩道~欅平)
天 候  10月5日 晴、 10月6日 晴
メンバー  福山 清二
行 程  < 10月5日(木)> 
 仙人池ヒュッテ(6:20)~仙人谷・雪渓(7:35)~仙人温泉小屋(8:20)~
雲切新道・尾根頂上(9:15)~仙人谷ダム(11:40)~阿曾原温泉小屋(12:55)(泊)

 <10月6日(金)>
 阿曾原温泉小屋(4:00)~折尾谷(6:45)~大太鼓展望台(7:50)~
志合谷トンネル(8:05)~水平歩道始・終点(9:50)~欅平駅(10:30)
 内  容
 5日の早朝、多くの人がカメラを構えて仙人池と裏釼のモルゲンロートを待っていた。
 日の出時刻から30分経過した頃に裏釼に太陽が差し込み輝いた、それがそのまま仙人池に映った。
 しっかり写真に収めてからすぐ阿曽原に向けて仙人谷の下降を始めた。目前に見事な紅葉に染まったモルゲンロートの仙人山が現れた、陽が射さない部分は霧氷で覆われていた。
モルゲンロートと霧氷の仙人山
 足元脇には5cm以上の霜柱が続き、韓国からの女性登山者が壊しながら歓声をあげていたので追い越した。
 下山路は仙人谷に沿っているため急傾斜の上、雨上がりで足元が軟弱なので滑り落ちそうで緊張した。とりわけ仙人谷に流れ込む渓流の石や岩が滑りやすいので転倒をすごく警戒した。
 天気は良く遠くに見える後立山連峰の眺めが場所によって様々変化するので癒され楽しめた。
仙人谷と下山路、後方は後立山連峰
 しばらく下降して雪渓に到達した。
 小屋で、この雪渓付近で9月30日と10月1日に2件の滑落死亡事故が連続して起きたと聞き、アイゼンはすぐ装着出来るように収納していたが、付近に安全な装着場所が無かった。雪渓の幅は10mに満たないものだったが崩落が進み、表示された取り付き地点の落差が2m以上もあり危険なので別の場所の梯子で雪渓に立った。
 傾斜が結構厳しく滑ったらそのまま20m程先の崩落部分から約5m下の谷に滑落する危険があった。アイゼン装着行為が危険なためゴミの溜まった場所など滑らない場所を選び一歩一歩確認し最大の注意を払って越えた。
 難所を超えたら対岸の中腹から2本の噴気が立ち昇っていた仙人温泉の源泉だった。しばらくして仙人温泉小屋に到達したが9月初めに閉じているため通過してすぐ先の丸木橋とロープが設置してある仙人谷を渡渉した。
 これからは雲切新道、以前はそのまま仙人谷沿いの登山道だったが事故が絶えなかったため尾根沿いの雲切新道を阿曽原温泉の主人など黒部を愛する人たちが2007年7月に安全な新たなルートとして拓いたそうだ。
 しばらく進んで振り返ると雄大な紅葉した山並み、深い傾斜の底に真っ白な仙人谷が下っていた。仙人温泉の噴気上がる対岸の森の中には仙人温泉小屋も見えた。遠くには苦労して越えた雪渓も望めた。
雲切新道から仙人谷、中央に雪渓、湯煙は仙人温泉
 すぐに尾根に出ると尾根頂上(標高1,629m)の表示があり、紅葉が綺麗で後立山の一部が再び見えて来た。そこからは長い梯子が幾重も続く箇所や滑りやすい急傾斜の土の下山路が長く続いた。
 雨降りだったらとても大変な下山路だった。後立山の変化を楽しみながらどんどん下山していたら若いカップルに出会った。もう少し下で単独の高齢者と会ったが仙人池方面への登山者は2組3人だけだった。
 しばらく進むと遥か下に紺碧の水を貯えた仙人谷ダムが見えた。見えてからも結構歩いたが、突然10m程前から真っ黒な動物が向こうに走り去った。毛並みが綺麗で人間より少し大きい熊だった。右は谷底、左は高い崖が続く狭い一本道なので熊が隠れるところもない。怖くもあるが熊も逃げたのだから怖がっているのだろうと追い払うように大きな声を出しながら注意して前進した。
仙人谷ダム(施設内に登山者用通路)
 しばらくして仙人谷ダムに到着、屋上から構内を抜けさせて貰う構造になっていた、内部を表示に従って進むと線路が横切り、右のトンネルから左の黒部川に架かる鉄橋に続いていた。
 トンネルからは硫黄臭もする熱風が噴き出していた。欅平駅から黒部第四発電所まで鉄橋以外は全てトンネルで続く関西電力黒部専用鉄道だった。硫黄が送電線を腐食させるため電車でなく蓄電式機関車で小型の客車や無蓋車を運行しており、阿曽原~仙人ダム間は高熱隧道と呼ばれている。横切った場所は正にその仙人ダム出入口だった。
関電黒部専用鉄道トンネル(高熱隧道)
 仙人谷ダムを過ぎると約100mの登り返しがあり高度は約950m、多少の上下や一部崩落個所等はあるものの水平歩道なのかと思う平坦な道が阿曾原温泉小屋上部まで続いた。
 そこから約100m急坂を下りた所に阿曽原温泉小屋があった。手続きを済ませると缶ビールを買いザックを背負って露天風呂に直行した。なんと小屋から70m位下降した場所にテニスコート2面以上の草地の広場があり中心に大きな露天風呂があった。
 石鹸と風呂桶はあり掃除は行き届いていたが脱衣所も隠れる場所もなく湯煙が立つ奥のトンネルから温泉のホースが湯船に流れ込み、熱ければ反対方向からのホースの水で温度調節する実にシンプルな温泉だった。大自然と広い湯船を独り占めして缶ビールを飲み温泉を楽しんだ。明日の新幹線乗車を考えてゆっくりと髭剃りも済ませた。女性の時間帯まで2時間近くあったのでザック内のものを全て出して天日干しも出来た。
阿曾原温泉、露天風呂
 小屋に戻るとグループ登山者が多く、ほぼ満員の状態だったが、仙人池ヒュッテからは私と韓国のグループだけの感じだった。夕食のカレーライスはルーも富山のコシヒカリも美味しかった。夕食後、黒部や阿曾原温泉小屋に関したNHKのビデオ上映と小屋主人の佐々木泉さんの話を聞くことが出来た。
 トイレは水洗で綺麗だったものの小屋は少々傷んでいたが、雪崩を避けるため小屋は雪の前に毎年解体してトンネル内に保管し、翌年取り出して組み立てていると聞き黒部の冬の厳しさと大変なご苦労を改めて感じた。
 翌朝は宇奈月温泉での入浴を考えて4時に出発した。
 キャンプ場横から進むと早速、水量の多い沢を丸太橋で渡った。100m程度の登り返しで水平歩道に至ると思っていたが長い梯子の登りや右側がすぐ崖でない区間が続き表示も無いため何処から水平歩道か分からなかった。次第に水平歩道らしくなり、折尾谷の関電送電線表示があった先に長い滝が現れた。
 更に進むと大きな砂防提があり、水が滝の様に流れ歩道は堤防下をトンネルで通過していた。大太鼓付近まで進むと断崖絶壁が上の方から崩れ落ち補修中だった。この場所の崩壊が大規模だったため水平歩道の通行止め解除が9/17まで遅れたそうだ。
水平歩道・改修中の大太鼓付近
 黒部川で対峙する目前の奥鐘山は西壁だけで幅1km、高さ800mもある国内最大の岩場だそうで見るからに壮観だった。大太鼓展望台の表示に阿曾原から6.2km、欅平駅まで5.4kmとあった。崖の上下が見渡せる醍醐味のある水平歩道がまだまだ続く。
丸太設置部分が水平歩道
 少し進むと志合谷、トンネル内ライト必要の表示があった。ここは先ほどの砂防提下と違い岩をくり抜いたトンネルで全長150m、真っ暗で曲がる箇所も多く、道には削り残しの石が残り相当量の地下水も流れ5cm程度の水たまりがあちこちにあるなど照明無しでの通行は出来なかった。
水平歩道・志合谷トンネル
 硯谷を過ぎ欅平駅が近くなる頃は唐松岳方面の展望が良かった。程なく欅平駅の水平歩道 始・終点の表示がある場所に着いた。ほぼ階段状の道を400m下降して多くの観光客であふれる欅平駅に到着した。
 まとめ
 1日の室堂から雄山、大汝山、別山、剱沢雪渓、仙人池、池の平山、仙人谷、雲切新道、仙人谷ダム、阿曾原温泉、水平歩道そして欅平駅まで5泊6日の縦走を予定通り終えることが出来た。70歳を超えテント泊装備を止めてザックを軽量化した事で余裕をもって縦走出来た。天候に恵まれ怪我もなく無事歩けたこと、忘れられない経験や大きな感動を頂いた事に心から感謝している。
( 文・写真 福山 )
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