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南アルプス(北岳・間ノ岳・塩見・荒川・赤石・聖岳)縦走
その② 三伏峠小屋~烏帽子岳~小河内岳~前岳~中岳避難小屋
日 時  平成28年7月20日
メンバー  福山 清二
行 程  7月20日
(三伏峠小屋3:00~烏帽子岳4:30~小河内岳8:10~高山裏避難小屋11:50~
荒川前岳16:45~荒川中岳避難小屋17:10)(泊):天候 晴れ
 内 容

 今回の厳しい縦走の中でも今日は厳しさが予想されるコース、昨日と同じように距離が長く、しかも最後に荒川前岳まで600mの直登があるので余裕を持つため三伏峠小屋を夜明け前の3時に出た。
 キャップランプをつけて烏帽子岳をゆっくり登っていたら頂上はまだなのに急に目の前が開けた。なんと真正面に夜明け前の朝日を受けて輝く雲海そして秀麗な富士山の姿があった。あまりに衝撃的な光景に感激して何枚も写真を撮った。ふと反対方向を見ると美しい満月や雲海が澄んだ空間に見ることが出来た。しばし見とれていたら塩見岳方面から日の出前の兆しが現れた。急いで頂上に登り、しばらく待つと塩見岳と蝙蝠岳の間の峰からの日の出が仰げた。
 少し南には雲海に浮かぶ富士山、反対の西側には朝日を受けてとりわけ美しい小河内岳と頂上直下にメルヘンチックな小河内岳避難小屋が見えた。
 素晴らしい景観と清々しい空気、大自然と空間の中に浸ることができたことを嬉しく思い心から感謝した。
烏帽子岳から見た早朝の満月
塩見岳・蝙蝠岳からの日の出
朝日に輝く雲海と富士山
小河内岳と小河内岳避難小屋
 先を急がねばならないのに衝撃的な光景の連続に相当な時間を費やした。さらに、メルヘンチックな小河内岳避難小屋に立ち寄り、8時過ぎだったが朝食の補助食としてカップのキツネうどんを頂いた。美味しく一滴残さず食べ麦茶のお代わりまで頂いた。
 目の前の大きな荒川岳を指差して中岳避難小屋へのルートを尋ねると優しく教えてくださり、頂上に小さく見えるのが中岳避難小屋、その向こうが赤石岳、頂上直下の雪渓が小さくなったがまだ綺麗に見えていると説明してくださった。避難小屋と言うより優しいご夫婦が営まれている民宿の感じさえした。超抜群なロケーションで三伏峠からは少し時間はかかるものの、是非一泊してみたい避難小屋だった。
 縦走路に戻って数分で小河内岳頂上に到着、標高は2,802mなのに中央アルプスなど360度の大展望は素晴らしかった。ここでも誰にも出会わなかった。この間先を越された人は2人だけ、今日の荒川岳方面への縦走は私を含め3名ということになりそうだ。
小河内岳頂上、雲海の奥は中央アルプスの峰々
これから登る荒川岳、頂上左端に今夜の宿
 時間をかけ過ぎたので少し先を急ぎ、やっと昼前に高山裏避難小屋に到着した。予定時刻を過ぎているので通過しようとしたら小屋の主人(おやじさん)から、「どこに行く」と声をかけられた「中岳避難小屋」と答えると「わかった今から無線で中岳避難小屋に連絡してあげる、名前は?」と言われた。名前を言い「ザックは重いし登りに弱いので時間がかかる。」と言うと「心配ない日が沈む前に着けばいい、早ければいいと言う者は馬鹿だ」と歯切れがいい。」300円でオレンジジュースを頂きスマホで写真を撮り、撮ってもらった。「携帯も持たないがスマホは便利なものだのー」「30分も行けば水場があるので汲んでいくといい」とも、まだまだ話したかったが先を急いだ。
 登山計画書では、私より1日早く畑薙から茶臼岳~蝙蝠岳を大縦走中の同じ山岳会の加藤隊5人と荒川前岳手前で出会う予定だった。しかし、予定場所より少し手前で出会った。私が予定より遅いので心配かけていたようだが、2時間も違わない。JRほどではないがそれぞれが別のルートを1週間以上かけてほぼ逆に縦走する者同士が、双方とも順調に縦走出来て出会ったこと自体が凄いことと勝手に思った。加藤隊はすぐ近くの高山裏避難小屋泊なのでゆっくりしていた。私はこれからが今日のハイライト、しかも夕刻には天気も崩れそうなのであいさつ程度で先を急いだ。しばらく低木帯の急登だったが小バエがたくさん石などに群がり時折は体に集って来るので早く抜けたかったが登りなので苦労した。やっと森林限界に出て小バエもいなくなった。
 これから荒川前岳頂上まで見上げるばかりの急登が続く、ガスが出始めた。
森林限界、前岳頂上までの直登起点
 頂上近くなるほど急登だったが、適当な傾斜で登山道が出来ており、自分に合わせた歩き方が出来るので見た目の凄さの割には楽に登れた。しかし、頂上付近では濃いガスがたちこめ、時折風で流されて視界が広がると数十メートル前進を繰り返した。前岳頂上付近は崩落が進んでいたので緊張した。
 中岳に行くにも何回も立ち往生し、中岳からすぐ先の避難小屋までもガスが晴れるまで時間がかかった。やっと中岳避難小屋に到着して高山裏のおやじさんや加藤隊長から聞いて私の到着を待ってくださっていた主人に挨拶し親しく懇談した。他の3夫婦と一人の宿泊者とも色々の会話が出来た。
 しばらくしたら高山裏避難小屋のおやじさんから「福山は到着したか?」の無線が入った。数メートル離れた場所での無線の会話の声がそのまま聞こえた。中岳避難小屋の主人が差し出した受話器に大きな声でお礼を言った。心配してもらって本当にありがたかった。
一瞬ガスが晴れた前岳登山道
崩壊でハイマツ帯が登山道化している前岳頂上付近
 ・まとめ

 今回の縦走の中でも、昨日の熊ノ平小屋~塩見岳~三伏峠小屋と、今日の三伏峠~高山裏避難小屋~中岳避難小屋が一番大変だと覚悟していた難関区間だった。
 余裕を持つため三伏峠を早立ちしたが、烏帽子岳からの感動的な景観、小河内岳避難小屋と小河内岳からの展望の素晴らしさ等に時間を費やし、やっとたどり着いた荒川前岳~中岳避難小屋ではガスに覆われてやや緊張した。
 それにしても予定通り加藤隊と荒川前岳登山途中で元気で出会えたこと、高山裏避難小屋のおやじさんや中岳避難小屋の主人の人間味あふれる対応に感激した。
 中岳避難小屋での主人や同宿者の方々との会話は3,083mの頂上に建つ特徴的な避難小屋の空間を偶然にも共有したこともあり、たまたまの出会いながら本当に嬉しい一生の思い出に残るひと時だった。
( 文・写真 福山 )
その① 広河原~北岳~間ノ岳~
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