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宝剣岳・檜尾岳・熊沢岳 (中央アルプス縦走②)
山行日  2014年7月29日
天 候  晴れ
メンバー  斉藤(宗)  斉藤(滋)
行 程  宝剣山荘(4:55)~宝剣岳山頂(5:20)~ 三ノ沢分岐(6:20)~
極楽平(6:32)~檜尾岳(10:20-10:35)~熊沢岳(12:35-13:00)~
東川岳(14:50)~木曽殿山荘(15:28)
 内 容

 ヘッドランプの灯りで身支度を整え、チーズ・パンを少し口にし部屋を抜け出る。
 今日はアップ、ダウンの長い縦走になりそうなので、山荘での朝食時間を節約して替わりの弁当を受け取っている。ご来光を眺めるのか数人の人影があるが、宝剣岳に向かう気配は無い。
 目の前に立ちはだかる宝剣の岩峰、岩場は苦手だが、昨日リハーサル済みだ。鎖が冷たいので手袋をして慎重に登る。2人きりなので焦らず登れるのがいい。
 誰もいない山頂からは次に目指す御嶽山が大きく見える。反対側には今日も八ヶ岳、南アルプス、富士山が雲海の向こうに並んでいる。絶景! 
 いつもならこの景色、カメラを手放せない筈だが今はそれどころではない。取りあえずここから見えている極楽平まで、未知の岩場を下って行かなければならない。上半身は念のためスリングの簡易ハーネスを装着する。さあ行こう。気合いを入れてMの後に続く。
正規のルートにトンネルも
 しっかりした鎖、ホールド、スタンスを確認しながら下る。転倒でもすればただでは済まないだろう。不安な場所は鎖にカラビナを掛け替えながら下る。いつもの事だが日々の生活に追われ、今回も事前に十分な勉強をしていない。
 木曽駒~空木岳の縦走路には岩場があるとガイド本でチラッと見て覚悟はしていたが、足場の悪い痩せ尾根、瓦礫交じりの急下降、垂直に近い(と思える程の)岩壁の登りと次から次に現れる難所に息つく暇もない。立ち止まれば進めなくなりそうで必死に足を出す。
 緊張感で喉はカラカラ、水分補給しても直ぐにまた渇いてしまう。こんな筈ではなかった。
 《信州山のグレーディング(長野県山岳遭難防止対策協会)》によれば、確か甲斐駒や仙丈ヶ岳と同じランクだった筈。自分の実力の無さを棚に上げ、年々、年を重ねていることも忘れ、騙されたような気分になる。
下りなのに登りもある
宝剣岳の下降ルートを振り返る
 普段の反発は何処へやら、今日ばかりはMの指示に素直に従う。
 まずまずのペースで極楽平に無事到着し、大きな山場を越したとホッとする。勢いづいて島田娘ノ頭を越え、ようやく朝ごはんを摂る。
 最大の難所(と思った)宝剣岳の下りをクリアした後なので気分は上々、ここからはお花を楽しみながらの稜線漫歩、と心も軽くなる。(知らぬが仏)
明るい縦走路 背後は島田娘
 宝剣山荘をトップで出たが、何人、追い抜かれたかな? 
 賑やかだった木曽駒に比べ縦走路は人影が少なく、ほとんどが単独行だ。中には女性もいて、こんな悪路をよくもまあ一人でと感心する。
 いくつもの同じようなピークを登り下り、どこを歩いているのかさっぱり分からない。(地図を眺める余裕がない)
縦走路を行く 遠景左から空木岳・南駒ヶ岳・熊沢岳
 大きい登り(檜尾岳?)が待ち構える鞍部に下り着く。
 「お疲れ様!」と休憩中のみなさんの笑顔に迎えられる。全く知らない人達、でもこの稜線で顏を合せば自然に言葉を交わし、励まされる。
 そうだ、いつまでも抱えていないで傷む前になんとかしようと、ミニトマトを勧める。たった2個ずつなのに「トマト!」と喜んでいただき反って恐縮する。大丈夫、傷んでなかったようだ。

 一息ついて元気回復、本日のハイライト檜尾岳に挑むとしよう。ハイマツの中に続く石ころだらけの登山道、バテないようゆっくりと登る。振り返れば、さっき下った痩せた岩稜が目に入る。無我夢中で過ぎた時間、今度は黙々と登り返す。 

 ついに登った檜尾岳、ここでも数人の笑顔が並んでいる。「ここが今日のコースの半分辺り、後の半分頑張らなくては」誰かの言葉を聞きながら頭の中は空っぽ、何とかなるだろうと開き直る。(昨年の韓国ツァー遭難場所はこの辺りだったと帰宅後知る)残りいくつのピークがあるか知らないが、後半は少しのんびり楽しみたい。(ここまでも、かなりスローペースだが)
檜尾尾根方面 メルヘンチックな檜尾避難小屋
 ビッグなピークを越えてもまだまだ続くアップ、ダウン。登りより下りに苦戦する。
 みなさんがスイスイ行かれるのに感心する。下りのたびにもたつき、どんどん引き離されるが、Mも心得たものでせかしはしない。
 危険な岩場に健気に咲くミヤマダイコンソウ発見、緊張感が薄れホッと一息つく。岩場から下りるとお花畑の道が続いている。ハクサンチドリ、ツマトリソウ、ウスユキソウ等々可憐な花がいっぱいで癒される。遅れついでにカメラを取り出し張り切って撮影。(帰宅後がっかり。ピンボケばかり)
まだまだ続く縦走路 奥は熊沢岳
辿った稜線を振り返る
 それにしても何処まで悪路は続くのか? 難所にかなり慣れたとはいえ、目の前に現れた1枚岩のトラバース。鎖が欲しい所だがなにも無い。宝剣岳付近ではあんなに鎖が張り巡されていたのに、縦走路には危険個所でも鎖が殆んど無い。(撤去されたらしいと後で教えられた)
 Mは目線より高い1㎝幅位のバンドを手がかりに片足やっとの足場をスムーズに伝って行く。私も真似をしてトライする。う~ん最後の1歩が届かない。差し出された手を信じて「エイッ」と渡る。渡れた! ホッとしたのも束の間今度はルンゼ状の急な岩場が現れる。脚をフル稼働してなんとかよじ登る。(結果アザだらけ)

 とうとう着いた熊沢岳。「怖かったね~。」と単独行の女性から声がかかる。
 「手を握ったのは3年ぶりかな?」とM。「10年じゃない?」と答えるとみなさんから笑い声。もう出発されるようだ。「小屋で早くビールを飲みたいからね」の声。分かりますその気持ち、私の喉もカラカラだ。宿泊予約の折「4時半までには着いてください」と念押しされた。大丈夫と思うが「遅れた時はよろしく」と伝言を頼む。これで安心、やっとお昼の弁当だ。
タカネグンナイフウロ
 いったいいくつのピークを越えただろう?(数えきれない)本日最後のピーク東川岳の標識にホッとする。
 もう間違いなく下りだけ。木曽殿山荘まで20分というタイムを、もはや信じない(我が家には当てはまらない)距離は短くても花崗岩崩れの痩せ尾根の急下降、今更焦ることは無い。慎重に膝を庇いながら下り、今宵の宿木曽殿山荘に到着する。

 指示された2階の大部屋に上がり座り込むと「斉藤さん」と呼ばれる。縦走中に声をかけあった福島の男性だ。
 ひと目で冷たいと分かるポリ袋いっぱいの水を差し出して「斉藤さんの分を汲んで来たから空いたボトルに移して」と言われる。小屋から9分下ると水場があると聞いていたが、汲みに行く気力が無く諦めていた。我が家が往復すれば、30分以上かかるだろう。恐れ多くて辞退する。トマトのお返しと言われても、たった2個のミニトマト、何倍返しになるだろう。エビ鯛どころの話ではない。それでも強く勧められて口にした谷水、冷たい!! 体中に染み渡る。思わずゴクゴクと飲む。みるみる減ったボトルにまたまた注ぎ足してくださる。Mも1本満杯にしてもらい恐縮しきっている。今まで飲んだどの水よりも美味しい!!

 やっぱり疲れたのかな? 今日の夕食は完食が精いっぱい。おかわり出来ない。
( 文・斉藤(滋)  写真・斉藤(宗)斉藤(滋) )
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