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北海道の山 ① 利尻山
礼文島からの利尻山
と き  2013年7月14日
天 候  晴れ時々曇り
メンバー  斉藤(宗)、斉藤(滋)               
日 程  7月11日
 宇部発(3:10)~ 舞鶴(13:30) 高速道路料金深夜割引利用
 

 7月12日
 舞鶴港(0:05)~ 小樽港(20:45)~ 道央道比布大雪PA(23:40)車中泊
 

 7月13日
 道央道比布大雪PA(3:15) ~ 稚内(7:50-9:50) ~
 利尻島鴛泊港(11:30) ~ 北麓野営場(12:00)
 

 7月14日
 北麓野営場(3:15)~長官山(7:10-7:30)~ 避難小屋(7:45-7:55)~
 9合目(8:20-35)~ 利尻山山頂(9:40-10;30)~北麓野営場(15:00)~
 鴛泊港(16:00)~ 礼文島香深港(16:40)ホテル泊
 内 容
 

 
飛行機に乗るのが怖くて北海道には行けないと思っていた。
 家族や友達から北海道の素晴らしさをいくら聞いても、自分には縁の無いことと過ごして来た。しかし舞鶴から小樽までフェリーで行けると知る。予備校の有名な先生のセリフではないが、「いつ行くの? 今でしょ!」そうだ、今行かなきゃ一生行けないかもしれない。
 ようやく決心する。私にとって初めての北海道。どんな山が待っているだろう。

  
 3日がかりでやって来た利尻島。憧れの利尻山に挑戦の朝を迎える。(気温10℃)地元利尻富士町から頂いた詳しい登山ガイド・地図によれば、標高差1490m、休憩を含む所要時間は好条件でも11時間。果たして計算通りに登れるだろうか?
 いづれにしても早立ちに越したことはない。幸いにも北海道の夜明けは早い。明るくなった3時過ぎに歩き始める。

 甘露泉を過ぎ針葉樹林の中を行く。早めに出発したもののどんどん後続に追い越される。軽やかな足取りの登山者の背にはこじんまりとしたザック、Mのような大型のザックの人などいない。
 好天の予想、日帰り登山、みなさん気楽に登っておられるようだ。「縦走ですか?」と若者3人のパーティから声がかかる。「いいえ、ピストンです。」と答えながら、利尻山から何処へ縦走できるのだろう・・・と考える。
 予期せぬアクシデントに備え、着替え・羽毛服・非常用食糧を詰め込み大きく膨らんだザックを見て、思わず出た言葉だろう。

 《変わりやすく、麓とは全く違う天候・・・》利尻山登山ガイドの内容が頭をよぎる。万が一何らかの理由で避難小屋泊まりになってもいいように、様々な物をつめこんだザックは重くその分スピードは出ない。
 一歩一歩焦らず進むとしよう。ようやく尾根に出る。(6合目の第一見晴台)風が強く飛ばされまいと身構えた瞬間、いきなり目の前の男性が足元から横倒しとなる。
 凄い風の力だ。幸い怪我は無く一安心。視界は開けて海が見える。辿る稜線の先端には小さなピーク、あぁ登れそうだとようやく思える。
第一見晴台 穏やかそうだが強い風が吹いている
 さっきから、いつの間にか我が家にピタッと付いて来る男の子(いや女の子だった。間違って「僕ちゃん」と声をかけてしまったが)元気が有り余っているのか、お母さんと弟を置いて一人で先行しているらしい。
 お母さんの了解を得ているか確認してこれ以上進み過ぎないよう話しかける。稚内の小学4年生とのことだが、Mの「北海道の食べ物で何が一番美味しい?」の質問に「ホッケ」と明快な返事。(小学生の答にしては意外だったが、後日、塩焼きを注文して食べたところ大正解、油がのって非常に美味しかった。)

 小学生に励まされ、胸突き八丁もどうにかクリアして第二見晴台に到着。
 うわぁ~ 凄~い、写真やテレビで何度か目にした利尻山の尖った山頂が間近に迫っているではないか。・・・と喜んだのもつかの間、にわかにガスが湧いて来て山頂を隠してしまった。
 青空がいつの間にか消え霧雨が降りだす。何という不運、天気予報はバッチリだったのに。雨具を着る程でもなさそうだが風も強く、濡れて体温低下はまずいと面倒だが着用する。

 長官山から重い足取りで避難小屋に向かう。展望の無い山頂はがっかりだが、ここまで来れば進むしかない。
 山腹をトラバースぎみに下っていると、いつの間にか前方が明るい。奇跡・・・?!(と思えた。)すっぽりと山頂を覆い隠していたガスが消え、雄々しい利尻山の姿が・・・。またいつ消えるかもしれない、早く早くとカメラをもどかしく取り出し立て続けにシャッターを切る。
     
霧が晴れ山頂が現れる
花の斜面
 ゴロゴロと重なる滑りやすい岩屑の急坂を登る。野営場の管理人さんが教えてくださったザレ場だ。
 下りは難儀するだろうな、みんなてこずっている。
 少しずつ高度を上げるにつれ足元に可愛い花々が現れ始め慰められる。なんという花だろうか?
チシマフウロ
山頂はもうすぐ
 ついに着いた。憧れの山頂。ガイド本やテレビで見た利尻富士のあのてっぺんに今まさに立って居る!
 嬉しさがこみ上げる。記念写真をMと交代で撮ろうとしたら「お二人でどうぞ」と親切な人が声をかけてくださる。二人並んでカメラを渡そうとしたがカメラが無い!「カメラ落とした!」と大騒ぎしたら傍の人が「手に持っておられますよ。」エッ!本当だ。掌には無かったが手首にちゃんとぶら下がっている。恥ずかしい!「登れた嬉しさで完全に舞い上がってました。」周りは大爆笑。 

 山頂からの景色を楽しみながらゆっくりと休む。残念なことに礼文島は雲海の下だ。
 狭い山頂の人口密度はどんどん上がる。そろそろ下山するとしよう。この調子だと避難小屋泊まりは無さそうだ。管理人さんの「水は一人2L」のアドバイスに3L担いで頑張ったが、涼しいせいか減ってはいない。せっかく担ぎ上げた水だもの捨てずに行こう。
 下山はやはり気が楽だ。喘いで余裕がなかったのか、登りでは気づかなかったハクサンチドリを見つける。NHKの朝ドラ ”どんと晴れ”で主人公が苦労して見つけた花だ。
ハクサンチドリ
 下りを心配したザレ場にさしかかる。フィックスロープに助けられながら慎重に下る。上から下からスリップしたのか悲鳴があがる。
 
ザレ場を下る 鴛泊(おしどまり)港が見える
 登って来る団体さんとすれ違うため待機する。
 若い山ガールを含む元気なグループで、リーダー格の人が「お待たせしてすみません。」と爽やに挨拶される。「お元気ですね。」と返すと「荻原さんの山の会です。」と最後尾の男性を指さす。
 どこかで見たイケメン、そうだ思い出した。スキーのオリンピック選手荻原兄弟の弟次晴さんだ。ミーハー族の私は「テレビで応援しました。」と握手をしてもらいMに写真を撮ってもらう。(真夜中、寝ないで応援したのは金メダル獲得の兄、健司さんの方だったが・・・。)
荻原さんと握手
 6合目まで下るとトイレブースがある。前日、管理棟で購入した携帯トイレを使用する。(1セット 400円)ルールなので仕方がないが初めての経験で抵抗感がある。しかし、トイレブースは登山者のマナーがいいのだろう清潔で使い易い。
 一人一人の心がけと地元の方達の努力で利尻岳は殊の外美しい。すっきりしたところで時計を見る。鴛泊(おしどまり)港発、礼文島行きのフェリーは16時出航の筈、今から急げば間に合うかもしれない。喧嘩も早いが決めるのも早い二人、取りあえずフェリーに乗れるか電話する。予約が出来た。登山口15時がタイムリミット、急ごう。

 下山したらまず一杯。登頂を祝し、ウニ・カニの利尻島での晩餐を夢みていたらしいM。島内観光もしないままの離島は心残りだろうな。だが出来るだけ早く礼文島に渡り、好天の内に2島を巡り終えようと意見は一致。北海道本土まで帰れば後はゆっくり出来るだろう。
 例によって気は急げども足はそうはいかない。それでも気力でなんとか間に合う。出航間際に礼文島の宿をどうにかゲット。ウニ・カニは分からないが生ビールで乾杯出来そうだ。
 
 帰宅後。荻原さんのブログを拝見。
 利尻山の報告は掲載済みであった。荻原さんの山の会も往復で12時間かかったとのこと。やはり12時間かかった自分達、年のせいか・・・と少し落ち込んでいたので嬉しくなる。
 そういえばあの日は登山者が多く、離合で渋滞もした。今思えば、そのおかげで登れたのかもしれない。
 焦らずゆっくり一歩一歩と進むこと、大切なことを教えられ、いろいろな方やたくさんの花にも出会えた利尻山。遠くから眺めても、近くで見つめても、憧れ通りの美しい山だった。
 
文・斉藤(滋)  写真 斉藤(宗) 斉藤(滋)
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