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谷川岳(馬蹄形縦走と一ノ倉トレッキング)
メンバー  高田 暢年(CL、食糧)、大岡 一史(SL)、田村 敦子(記録)
10月5日(金)  大岡、田村は宇部から空路にて羽田→JR利用し茨城県内にて高田と合流→
一般道→佐野藤岡IC〔東北道=北関東道=関越道〕水上IC→R291号→土合駅(20:00)
10月6日(土)
【曇時々雨】
 白毛門登山口駐車場(5:00~10)→西黒尾根登山口(5:30)→ラクダの背(7:40)→
天神尾根分岐(9:00)→肩の小屋(9:05~15)→トマノ耳(9:30)→オキノ耳(9:45)→
ノゾキ(10:30)→一ノ倉岳(11:00~11:10)→茂倉岳(11:30~35)→
武能岳(13:00~10)→蓬峠(13:40)テント泊
10月7日(日)
【雨のち曇】
 蓬峠(6:00)→七ツ小屋山(6:40)→清水峠(7:20~40)→ジャンクションピーク(9:30)→
朝日岳(9:50)→笠ヶ岳(11:00~10)→白毛門(12:00~20)→
白毛門登山口駐車場(14:40) ⇒ 谷川温泉郷で入浴後、土合駅周辺でテント泊
10月8日(月)
【快 晴】
 谷川岳ベースプラザ(7:00)→マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢→(同じルートを引き返す)→
土合駅(12:00)→関越道〔水上IC→高崎IC〕→JR高崎駅にて高田と解散。
 大岡、田村は羽田までJR利用、羽田から空路にて宇部へ帰着
 
 憧れの山、行ってみたい山はたくさんあるが、私にとって谷川岳は別格。
 かつて一ノ倉に通い詰めていたという茨城在住の先輩に「谷川岳を歩きたい」と連絡したところ、「縦走なら」と快諾して下さり、今回の山行が計画された。
 
 10月5日(金) 

 宇部から空路で東京へ向かい、茨城県内で高田CLと合流した後、車で土合駅を目指す。
 約3時間走り、20時前に土合駅に到着した頃は2~3人の人影が見えるだけだったが、下りの最終電車が着くと、駅構内は大学山岳部所属と思しき若者などで急に賑やかになる。夜中も続々と車が到着し、翌朝目覚めるとホームに向う通路にまで人が寝ていて驚く。
 この駅の「古き良き時代」の匂いが、まだかすかに感じられる夜だった。
 10月6日(土)
 
 夜明け前に、明日の下山予定地となる白毛門登山口駐車場に車をデポして出発する。
 西黒尾根に足を踏み入れると気分が高揚するが、高度を上げるにつれガスが濃くまとわりつき始め、早くも気持ちがしぼむ。樹林帯を抜け出るとさらに真っ白、ラクダの背に立って行く手を見上げても、トマノ耳、オキノ耳は想像の中にしか存在せず。
 しかし、この先からクラミング的要素の強い登りが続き、楽しくなったところで天神尾根と合流。肩の小屋に寄って小休止した後、ピークへと向う。
 トマノ耳、オキノ耳周辺はこんな天気でも賑わっている。さすがロープウェイ利用で手軽に行ける百名山。
オキノ耳にて
 早々にふたつの耳を後にし、国境稜線を進む。晴れていればこの上なく素晴らしい稜線漫歩なのだろうが、ガスは停滞したまま。一ノ倉沢を一望できるはずのノゾキから下を覗き込んだが、見えるのは真っ白な空間だけで、まさに無念の極み。
 しかし、新潟側のガスがさらさらと流れて消え去り、緑、赤、黄、色とりどりの、やわらかい絨毯のような滑らかな斜面が目の前に現れた。思わず歓声をあげてカメラのシャッターを切りまくる。
紅葉の国境稜線を歩く 一ノ倉岳と茂倉岳(左手奥)
 一ノ倉岳の登りにさしかかる頃には烏帽子岩が姿を現し、群馬側のガスもどんどん上がってくるが、こちらは完全には晴れそうにない。
 ピークの目印のようなカマボコ型の小さな一ノ倉避難小屋。色も形も大きさも景観への配慮なのかな、と思ったりしながら中を覗いてみる。意外ときれいだが、本当にここでビバークするのはやはり遠慮したい。

 小休止を取った後、土樽方面との分岐点となる茂倉岳へ。我々は武能岳へ伸びる右手側の進路をとる。
 延々と下り、小さなアップダウンの繰り返しに飽きた頃に、武能岳への大きな登りが始まる。これをひと頑張りすると、あとは今日の目的地である蓬峠を目指して緩やかに下るだけだ。

 蓬峠は広い平らな草地で、快適なテント場である。往復30分もかかるのが難点だが水場があり、清掃協力金を払えばヒュッテのトイレも使用できる。
 テント設営後は明るい内から楽しい宴会へと突入。よく飲み、よく食べ、よく喋る。
 高田シェフ特製「ペミカン入り焼きビーフンライス」がとても美味しく、心もお腹も満たして心地よい眠りに就く。
しかし、宵のうちから無情にも雨が降り始め、朝まで雨音を聞きながらの長い夜となった。
 10月7日(日)
 
 朝食を摂りながら聞いた天気予報では、午後から天気が回復するとのこと。
 降り続けた雨は出発と同時に上がり、幸先が良い。
 蓬峠から七ツ小屋山、清水峠まで広い笹野原の中に続く縦走路は、足元の笹が刈り払われてきれいに整備されているので迷う事はまずない。
 大きな送電線の鉄塔が見えると、そこが清水峠。驚くほど立派な東電の送電線監視所があり、白崩避難小屋は傍にひっそりと佇む。
清水峠にある送電線監視所
 いよいよ標高差、約500mの朝日岳への長い登り。
 今日も視界はガスに閉ざされ、全く面白味がないどころか、ジャンクションピークまでが異様に辛く感じられる。せめて、ぼんやりとでも周囲の山並みが見えると気分も随分違うのだろうが・・・。
 ジャンクションピークを過ぎれば地形図上でもかなり特徴的な、だだっ広い湿地帯になる。木道に沿って歩き、ほどなく朝日岳山頂に辿り着くが、何も見えないので登頂の証に一枚撮っただけで笠ヶ岳へと向う。

 大烏帽子、小烏帽子などの岩塊が目立つ縦走路を、笠ヶ岳手前で大きく下り、下った分だけ登り返すと山頂だった。
 谷川岳東面が見えているはず、と考えるのも虚しいほどに、ここでも相変わらずの視界不良。
 白毛門まで予定コースタイムで45分、空が明るさを増してきたので期待してしまう。
笠ヶ岳から白毛門への縦走路も秋の色
 谷川岳東面の絶好のビューポイントと言われる白毛門。しかし、残念ながらこの場所から念願の光景を目にする事は叶わず、下山を開始する。
 顕著な岩稜帯ではないが、鎖場や、ボロボロになったロープがフィックスされたままの所、「ここに鎖があってもおかしくない」と思う所が連続し、気が抜けない。

 高度を下げると、霞んでいるものの谷川岳東面が見え始める。ガスが切れる度に足を止めてはカメラを手にするので、遅々として先へ進まない。CLもSLも付き合ってくれていたが、もしかすると半ば呆れていたかもしれない。
谷川岳東面 稜線部分にかかるガスはついに晴れず
 樹林帯に入ってからは網目のように露出した木の根の段差などで歩き辛く、すぐそこにあるゴールになかなか近づかなかったが、なんとか予定時間内に駐車場に降り立つ。

 下山後は谷川温泉郷で汗を流し、再び土合駅に戻って祝杯を挙げる。
 夜が更けるにつれ、今日も登山客が集まり賑やかになる。明日の好天が、皆、楽しみなのだ。
 10月8日(月・祝)
 
 夜明けとともに駅舎の中は空っぽになる。雲ひとつない澄んだ秋の空だ。
 慰霊祭が行われた後の、たくさんのお花が手向けられた慰霊塔そばの駐車場に車を置いて出かける。
 祝日の今日は6時からロープウェイの運行が始まり、すでに多くの登山客、観光客が列をなしているのをかなり羨ましい思いで見てしまう。
 一ノ倉トレッキングコースをマチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢まで足を伸ばし再び同じコースを引き返す。10月とは思えないような陽気でさわやかな風が気持ちいい。
 縦走したルートが今日はきれいに見渡せる。
白毛門(右)と笠ヶ岳(左)
一ノ倉
 一ノ倉の岩場は、誰でも自由に足を踏み入れることは許されていない。
 「もう来ないだろうなぁ。」その厳しく美しい岩壁を見つめて高田CLが呟く。それは、この岩場に情熱を注ぎ、想いを燃やし尽くした者だけが発し得る響きをもっていた。

 それぞれの谷川岳を胸にしまい、ブナ林の木漏れ陽の中を思い思いに歩いて喧噪のロープウェイ駅まで戻った後は、「日本一のモグラ駅」土合駅もひと通り歩き回る。
 高崎駅で、茨城へ帰る高田CLと別れ、電車と飛行機を乗り継ぎ、宇部に帰着した。
 
 天候予測が難しいこの山域で、雨に降られなかったことは「恵まれている」と何度もCLは言っていたが、「いつもの谷川」を知らない私は、もう少しお天気がよかったら、と欲がでてしまう。
 しかし、湯檜曽川源流部をぐるりと縦走できたこと、抜けるような青空の下で一ノ倉の岩壁を間近に愉しめたことなど、谷川にどっぷり染まった、充実した山行であった。
 
行程図
( 文・写真:田村 )
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