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春山合宿(双六岳〜槍ヶ岳)
日 程  4月28日(土)〜5月1日(火)
山 域  双六岳〜槍ヶ岳
行 程  4月28日(土)
宇部IC(7:30)=〔山陽道・中国道・名神道・東海北陸道・中部縦貫道〕
=高山IC(16:00)〜新穂高温泉駐車場(17:20)

 4月29日(日)
 新穂高温泉駐車場(4:15〜5:45)〜ワサビ平小屋(8:00)〜鏡平(13:00)
〜弓折岳山頂(14:20〜14:30)〜双六小屋(17:00)
 
 4月30日(月)
 双六小屋(3:30〜4:30)〜双六岳(6:00)〜双六小屋(6:40〜7:00)〜
樅沢岳山頂(8:05)〜硫黄乗越(9:15)〜千丈乗越(13:15)〜槍ヶ岳山荘(16:10)
 
 5月1日(火)
 槍ヶ岳山荘(5:00〜6:20)〜槍ヶ岳山頂(7:00〜7:20)〜槍ヶ岳山荘(8:10〜8:20)
〜飛騨乗越〜槍平小屋(10:00)〜白出沢出合(12:15)〜新穂高温泉駐車場(14:00)
〜高山IC(18:30)=〔中部縦貫道・東海北陸道・名神道・中国道・山陽道〕=宇部IC(3:00)
メンバー  竹之内 真人(CL、装備)、田村 敦子(食糧)
 
 冬期合宿ですっかり雪山に魅了された新人ふたり。大型連休は北アルプスに行きたいと先輩に相談したところ、ルートが明瞭で、この時期も入山者が比較的多い山域が良いのでは、とアドバイスを受け、新穂高温泉を基点として双六岳、槍ヶ岳を周回するコースを計画した。
   
 4月28日(土)【快晴】

 全国的に高気圧に覆われ、快晴の大型連休初日。高速道路の渋滞を覚悟しての出発だったが、拍子抜けするほど順調に新穂高温泉駐車場に到着する。
 星空を車中から眺めながら20時、就寝。
 4月29日(日)【晴のち曇】
 
 4時過ぎに起床し、簡単に朝食を済ませた後、身支度を調えて出発。
 左俣林道のゲートを過ぎて間もなく、路面に残雪が現れる。次第に小さなデブリが林道を埋めるようになり、中崎橋を渡り、左俣谷の右岸に入るとその規模は格段に大きくなる。
 奥丸山への分岐からはいよいよ本格的な登りだ。
 大ノマ乗越に直登しているパーティーや単独行者の姿もあるが、我々は鏡平から弓折岳へのルートを選んだ。
 目測よりも厳しい急登、気温上昇に加えて快晴の空からの強烈な日射に、イタドリヶ原を過ぎる頃には早くも竹之内からかなり後れをとる。
 半袖シャツでもよいほどの暑さで水分の消費も激しい。雪を食み食み歩く。喉元のひんやりした感覚が気持ちいい。
鏡平より望む西鎌尾根と槍ヶ岳
 鏡平より一望できる西鎌尾根縦走路、槍・穂高連峰に元気付けられ、弓折岳への急登も力強くリードしてくれる竹之内の後を必死に追う。
弓折岳山頂
 弓折岳山頂から双六小屋までは緩やかな稜線歩きだ。あとは楽なものだ、と若干余裕も出てくる。しかし、この時期、好天に恵まれるということは、雪はどんどん腐っていくという事だ。
 這松帯の落とし穴地獄に嵌ってもがき、なんとか這い出す。双六小屋へは予定した時間よりかなり遅れての到着となった。
 日没後は急激に冷える。寒さに震えながらテント設営。ラジオで天気予報を聞きながら夕食を摂り、早々に就寝。
 4月30日(月)【曇時々霧雨または雪】
 
 3時半に起床。朝食を済ませた後、空身で双六岳をピストンする。
 雷鳥たちに導かれるかのようにして雪の大斜面を登り、のっぺりとした台地のような稜線へ出る。頂上へ向うも、小屋へ戻るも、秀麗な鷲羽岳や、槍・穂高連峰を眺めながら歩けるとは、なんとも贅沢な場所だ。
双六の稜線を槍に向って歩く!
 テントを撤収し、昨日、弓折岳から何かとお世話になった単独行の青年に挨拶をして別れる。
 新穂高温泉を起点として、双六岳、槍ヶ岳へとピストンする入山者は多いようだが、縦走する登山者は少ないようで、西鎌尾根の縦走路にトレースはあるようで、無い。
 樅沢岳から見えた単独の先行者のトレースを辿ったり、辿らなかったりしながら、今日も相変わらず落とし穴に落ちては這い出す、の繰り返し。一向に行程がはかどらない。
 体力不足の現実に気分は沈む一方。その上、槍ノ肩直下で思わぬ試練を受け、もうひと息のところなのに、背中の荷物が一層重くのしかかり足が前へ出ない。
 ずっと遠くにあったはずの槍の穂先が突如、天から覆い被さるように目の前に現れたときの安堵と喜びはひとしおだった。
槍ヶ岳山荘横からの西鎌尾根縦走路
 槍ヶ岳山荘で幕営の手続きをしていると、厚い雲が姿を消し、夕陽が射してきた。
 しかし、疲労感も強く、時間も遅いため、頂上往復は諦める。
 出入り口を開けると目の前に穂先が見える所にテントを設営し、今日はビールで乾杯。
 先ほどから徐々に風が強くなっている上、ラジオの天気予報では明朝は雨。
 西の空が明るかったのに本当に雨?と半信半疑になりつつも、起床時に雨、強風の場合は穂先へ向わない事に決める。
 このままピークを踏めないかもしれない、と肩を落としているところへ、連休後半に予定されていた奥穂高岳南稜の計画は荒天が予想されるため中止、との連絡を受ける。
 すっかり意気消沈の我々とは反対に、勢いを増して吹く風を恨めしく思いながらもいつしか眠りに落ちる。
 5月1日(火)【晴のち曇】
 
 テントの周りが賑やかになった5時前、あわてて起き出す。
 まばゆい光が射し込んでくると、誰もが口をつぐみ、静まり返った中にシャッターを切る音だけが聞こえる。平和で幸せな朝に感謝。
夜明け
 みるみるうちに槍沢下方に向って伸びていく下山者の列を横目に眺めながら、アンザイレンして穂先へ向う。
 雪に埋まったままの梯子もあるが、常に確保しあいながらの登高になるほどの困難さではなかった。
 大学山岳部で活躍していた竹之内も、とは意外だが、お互いに今回が槍ヶ岳初登頂。
 青空の中で頂上独占という出来すぎたシチュエーションに、ふたりとも昨日までの辛さを全部忘れて笑みがこぼれる。
槍ヶ岳山頂にて
 登りよりも気持ちが引き締まる下りも、必要時にはお互いに確保しながら進むので安心感がある。
 単独行者、中には明らかな装備不良でも穂先へ突き進む登山者の姿もあり、いろんな意味で心拍数の上がる頂上往復だった。
 
 テント撤収後は飛騨沢をずんずん下っていく。
 槍平小屋より標高が下がると雪の下から勢いよく流れる水の音が聞こえ、そこかしこがスノーブリッジになっているのだと青ざめる。
槍平より下るとスノーブリッジが現れる
 白出沢出合までトレースを辿っていたが、どうも様子がおかしい。
 地形図で現在位置を確認すると、夏道から離れた所にいるため、林道を目指して登り返す。
 最後の最後に、痛恨のミスを犯し、気が遠くなるほど延々と続く林道歩きはうなだれ、終始無言。
 それでも、軽装の観光客で賑わうロープウェー駅に帰ってきた時は達成感がチラリと顔を覗かせ、そんな自分に苦笑いする。
トラック図
 高速料金の深夜割引を利用したいので、適当な時間まで平湯の温泉街でゆっくりお湯に浸かって疲れを癒し、腹ごしらえも十分にして飛騨を後にする。
 高速道路では事故にも渋滞にも巻き込まれず、予定通りの時刻に宇部に帰着。
 
 好天、登頂、何より、春山初級者ふたり組が無事故で無事に帰ってこられたこと。
 山の神様の宥恕に甘えきってしまった、初めての残雪期北アルプス。
 絶対的に不足している体力を充分に養い、この美しい山々が雪を纏う時期にまたチャレンジしたい。
 
(文、写真:田村 敦子、トラック図:竹之内 真人)
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