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積雪期大山縦走
1.期間  2012年2月10日(金)〜12日(日)
2.山域  大山(鳥取県)
3.天候  曇り時々雪
4.メンバー  大岡一史(CL)、江本正彦(SL)、田村敦子、福間博子
5.行程  10日(金)
 宇部(21:00)〜山口 (21:55)〜R9〜山陰自動車道〜米子道路〜
 11日(土)
 大山口駐車場(2:30)・・起床(04:00)〜駐車場発(04:50)〜大神山神社
〜元谷小屋(5:55−6:30)〜宝珠尾根取り付き(6:40)〜中宝珠越〜上宝珠越
〜稜線1570m地点(9:25―9:40)〜頂上避難小屋(15:40)〜夏山登山道五合目
(16:30―16:40)〜元谷小屋(17:20)〜就寝(20:45)
 12日(日)
 起床(06:45)〜元谷小屋発(08:30)〜大神山神社〜大山口駐車場
(11:00―11:20)〜米子道路〜山陰自動車道〜R9〜山口 (17:25)〜
宇部有料道路〜宇部(18:00)
6.内容  リーダー会では若手を対象にした積雪期の大山頂上縦走を企画した。
 担当の大岡が、2月例会で参加希望者を確認。
 今回の山行は例会でのみの募集だったが、入会一年目と二年目の女性会員二名の
参加申し込みがあった。二人は、ピッケルやアイゼンを使用する冬山は初級レベル
なので、頂上縦走の可否は、現地の雪の状態と二人のアイゼン歩行のレベルをみて
最終判断することにした。
 入山初日、宝珠尾根からまっすぐ稜線を目指した。
 北面のしまった雪質と二人の安定したアイゼン歩行を見て縦走可能と判断した。
 強風の中、アンザイレンしての縦走は、剣が峰にさしかかるあたりからホワイトアウトで視界が悪化、スタカットで前進せざるを得ない状況になり、結局頂上縦走に約6時間を要した。
 冬の大山ではよくある天候だが、冬山初級者には過酷な大山頂上縦走であった。
夏山登山道稜線に浮ぶ月と別山バットレス(by田村)
 初日、ヘッドランプの明かりを頼りに大神山神社経由で元谷を目指した。
 トレースはなく、ツボ足でラッセル。1ピッチで元谷小屋へ到着。
 元谷小屋に宿泊装備をデポして、宝珠尾根に取り付く。ルンゼ状の斜面にはデブリが確認できたが今日は雪崩れるとは思えない。ラッセルはひざ下程度、ワカンは使用しない。
宝珠尾根取り付き点(中央のルンゼ)
 尾根に上がったところで、アイゼン歩行に慣れてもらうために、アイゼンを装着してもらう。念のためハーネスも着用してもらう。
 アイゼンを着用する必要のないふかふかの雪をラッセルしていると山口県境をラッセルしている様な気分になる。
 静かで明るい宝珠尾根のラッセルが続く。
 途中、樹林の切れ目から元谷を見下ろすと、弥山尾根の取り付きに向かうクライマーの行列が見える。この時間に取り付くようでは、順番待ちで最後に取り付くパーティーはビバークも覚悟しなければならないだろうなどと思いながら、しばし元谷の景観を堪能する。
 しばらく行くと右手正面に大屏風岩、左正面に三鈷峰が現れる。凍てついた岩壁に冬の大山らしさを感じる。
宝珠尾根の登り
宝珠尾根にてアイゼン点検中のメンバー
上宝珠越の樹林帯を抜けて、北斜面のトラバース
宝珠尾根から望む剣が峰(by田村)
 上宝珠越の樹林帯を抜けてから、三鈷峰を左手に見ながらクラスとした斜面を直登し、9時25分稜線上の1560m地点に抜けた。
 風は強いが歩行できないほどではない。しかし、すぐに顔の感覚がなくなる。あわてて目出し帽をかぶる。
 リーダーの大岡に頂上縦走の意思を告げ、同意を得る。すぐにアンザイレンして縦走を開始した。このときすでに弥山の方角は薄っすらガスがかかり始めていた。
 四人は天狗ヶ峰手前までは快調に進む。天狗ヶ峰を過ぎたあたりからガスがかかり始める。徐々に視界は悪くなっていった。雪面と空間の境の見分けが付かない。
 ホワイトアウトの中、大岡から枝尾根に迷い込んでいないか、現在地の確認指示があった。
 真直ぐな縦走路、進むべき方角を間違わない限り枝尾根に迷い込むことなど考えられないが、不安そうな表情をしている新人二人を安心させるためなのだと思った。
 GPSにて現在地を確認。私は山で電子機器(GPS)を使用して位置確認をすることに不正をするような罪悪感があるので普段は使用しないが、今回はパーティーの安全確保のため、入念に確認。同時にシルバコンパスと地形図でも進行方向を確認。
 そのとき強風で、地形図、資料、計画書がポリ袋ごと吹き飛ばされた。オーバー手袋を着用しているため保持力が弱かったのだと思う。自分の注意が足りなかったことが悔やまれたが、この先は地形図がなくても磁石さえあれば大きな問題ではない。
 視界はますます悪化。4〜5メートル先を歩くメンバーの姿が薄っすらと認識できる程度。
 途中、雪庇を踏んで足元の雪面にクラックが入るなどのアクシデントもあり、いつ雪庇を踏み抜いても不思議ではない状況だったので、安全確保のためスタカットで前進することにする。
 強風で声が届かないので、大岡とトランシーバーで連絡を取りながらザイル操作にミスの起こらないように気を配った。
 6ピッチ目、再び、大岡から位置確認の指示。なかなか頂上避難小屋に着かないことに不安を感じている新人二人への配慮か。
 GPSでの位置確認。気温が低いため、GPSの電圧が低下。画面が消失し、機能停止。
(※添付のトラック図の軌跡はここまで。続きは手書き)。
トラック図
 視界は若干回復したが風は強い。
 頂上付近にいるとは思ったが、新人二人はかなり消耗している様に思われたので、緩斜面を4人が座れる程度に均してツエルトを被った。強風でツエルトがはためくが、中は別世界だ。
 二人は重ね着をしたり、行動食を口に含んだりしている。まだ判断力も食欲もあるようで安心。その間に大岡は頂上避難小屋付近にいるパーティーにコールして位置確認。そのことをトランシーバーで連絡してきた。二人の表情が若干和らぐ。
 15時40分、縦走終了。
 頂上避難小屋付近のパーティーと合流し、小屋を探す。
 避難小屋は屋根まですっぽりと雪に埋まり、2階の積雪期用入り口は、2m雪を掘り下げた穴の中にあった。最初に入口を掘り起こした人は大変だったろうと思った。
 日の暮れる前に元谷小屋に戻りたいので、アンザイレンして一気に五合目まで下り、五合目からは行者谷を経由して暗くなる前に元谷小屋に戻ることが出来た。
 翌日は、元谷から下ったところで雪上訓練をした後、大神山神社の参道を歩いて下山した。
大神山神社にて
大神山神社の参道を下る
 
 初級者のいるメンバーでの頂上縦走は安全率を高く見積もるため、撤退することが多い。もちろん今回安全率を低く見積もったつもりはなく、この二人なら充分縦走可能と判断しての行動である。二人が今回の山行をどのように感じているかはわからないが、この経験が今後の山行に生かされることを願っている。

 今回、トランシーバーとGPSが安全を担保するのに役立った。
 これまで山の中でGPSで位置確認をすることに罪悪感があったが、補助的に使用するのであれば、視界の利かない状況下での安全性向上に役立つツールであることを認識した。ただ、読図力が身についていないのに、GPSに頼って山を歩くのが危険なのは言うまでもない。
 GPSの弱点として、低温下では電池の機能低下が大きいので、保温方法など工夫が必要だと感じた。今後の山行での有効活用を考えて行きたい。
 
 
 田村の感想;
 頂上縦走すると告げられた時の期待感。長時間にわたるホワイトアウトでの不安感。しかし、緊張感を途切れさせることなく全行程を終えることができた。
 どんな小さなこともおろそかにしない、という当たり前の事が過酷な状況であるほど重要になってくることを、身を持って学んだ。
 常に変化する状況のその先を予想する想像力と判断力は今後、経験を積んで身に付けていきたい。

 福間の感想;
 生まれて初めての大山は、この上なく歓迎してくれた。
 自らの体力の限界を知ってしまった事はショックだったが、それがまた教訓となり行動力に繋がると思う。
 また、山の本当の厳しさや危険性を、身を持って体験出来た事、メンバーの助けがあって無事に戻れた事に感謝し、今後の山行に反映させて行きたい。
 
( 文・トラック図:江本、 写真;田村、江本 )
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