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香仙原〜赤土山読図山行
山行日  2009年4月18日 
メンバー 斉藤宗(文・写真)、江本、三浦比、鹿野陽、斉藤滋 
 4月3日の香仙原〜弥十郎山の読図山行は ほぼ完璧に終えた。
 この時点で次の読図山行として香仙原〜赤土山の構想を考えていた。
 実は1月末 山口県山岳連盟の冬山登山大会に前日から参加した会の若手3名が 奈良原から香仙原に登ろうとして、途中からルートが分からなくなって 引き返した尾根である。
 これを登り 下山も読図で赤土山からゴギの郷に下ることにする。
 Gに話すと「登りも下りも藪漕ぎは 少し厳しいんじゃない」と言う。
 ここ最近 花見やワラビ採りをかねたチンタラムードの山行ばかりしていたので、少し気合を入れて体をいじめたく考えは変えない。
 季節的には ぎりぎりのチャンスで、山菜も芽吹く4月18日を山行日に決め、予定コースをメールで流し、参加者を募集する。
今回の予定コース
 まず 若くて山全般に意欲的なSy君が冬のリベンジをしたいと参加表明。
 続いて北アルプスではテントを担ぎ2日分を1日で歩くMhさん、宇部山岳会リーダー会CLのEさんが参加することになる。
 屈強のメンバーで心強いが 筆者とGが見劣りする。
 山行中休みたくなれば「現在地を確認しましょう」と言って時間をとればいいと楽観する。
 当日は快晴で暑くなりそう。8時半スタート地点の西の谷川を確認して、まずは藪に突入する。
 すぐに歩きやすくなり一安心。
 ところが50mぐらい登ったところで、下から地元のおばさんが大声で何か言っている。 立ち止まりよく聞くと「そこは登れないですよ。前に登山の人が登って行き、諦めて下りてきなすった。」と言っている。
 若いSy君が小声で「それは僕です」と答えているのがおかしい。
 田舎の人は親切である。「ありがとうございます。大丈夫です」と大声で返事し前進。  藪は薄く イバラもほとんど無く快適に進む。  
 すぐに歩き易くなる
露岩もある 
 地図上のポイント3(670m)辺りで尾根がやや広くなり、樹も茂り見通し悪く 要注意箇所である。
 Sy君たちが引き返した地点だそうだ。
 派生する尾根の数や方向からポイント3であることを確認しシルバコンパスを設定し直す。
 西へ斜面を下っていくと明瞭な尾根形状に乗る。
 周辺も見渡せる位置に来たのでシルバコンパスと地図を使ってクロスベアリング法で現在地の確認練習。
 全員の結果が一致し笑顔満開。第一の難所を突破したので小休止しカロリー補給。
 ポイント4からは明瞭な尾根が続く。
 楽勝尾根
 山菜の女王といわれるコシアブラも所々あり元気な人は採取しながら登る。
 尾根がやや広くなりブナが現れ 獣の強い匂いや、熊の爪あとも見える。
 株立ちコシアブラ
 筆者が先頭を歩き キョロキョロと上ばかり見て歩いていたら 二番手にいたGが「キャアーおとうさん(Gは筆者をこう呼ぶ)ヘビ!!、おとうさんは今マムシを踏んだよー!!」と大声を出している。
 振り返って見ると 確かにどくろを巻いているマムシが。
 よかった 踏んづけても 冬眠から出てきたばかりのマムシは反応が鈍かったようだ。 (反省1・今からの季節、山菜よりも足元注意)
 ポイント5は見通し良く位置確認が容易である。標高800mを超えるとコシアブラの芽は固い。ポイント6前後は単調な登りが長く続く。
  明るいブナ林
 笹の丈も高くなり 先頭を行くEさんの姿も見失う(スピードもある)。
 進路が西に向いたころから 笹コギに飽きがくる。よって頂上までが長く感じる。
 正午前ようやく香仙原に着く。
 Sy君は積雪期に再度登ることを検討して Eさんにアドバイスしてもらっているのが嬉しい。
 展望が悪いので もう少し頑張り隣の赤土山に移動し 安蔵寺山に向けて開けた場所で昼食とする。
赤土山頂上
 快晴無風・展望良好、コシアブラご飯のむすびが旨い。
 13時前 少し引き返して1077mらしきから いよいよ下山開始。(下山こそ読図の本番) 香仙原より笹薮が濃く少し不安であるが ずっと下りばかりの筈だ。
 ポイント7からは 広い尾根を注意しながら真ん中をくだる。
 尾根が三方に分かれる箇所では特に地形を読み、慎重に進む。 ・・・と 今までは全く見なかった ピンクのテープが目に付く。
 目障りで無視しようとするが進む方向に 時々現れ いつの間にかテープに慣れてしまう。
 それにしても ひどい笹薮が続き下りといえども かなりの体力を使う。
 もしこの下向きの笹を登り直すことにでもなったら大変だろう。
 やっと平坦な気持ちの良い場所に下り立つ。
 きれいな林で840m地点である。
 840m地点
 二つ目の要注意箇所を通過し、やや安堵するがまだまだ先は長い。
 しかも三つ目の要注意箇所を控えている。
 840mを出た時点で歩き易い大きな尾根を進む。
 左に小さな草原状のきれいな尾根をみる。
 ちらっと地図を見るとその尾根の先は上ノ谷川の大堰堤の下に向かっている。
 この尾根に入ってはいけないと思い込む。
 元気なEさんとSy君は開けた尾根をどんどん先に下りて行く。この地点で方向が変わるはずなので 呼び止めようとするが差は開くばかり。
 大声を出して呼ぶが 返事が無いので聞こえないのだろう。
 Mhさんが笛を吹く。自分も持っていたことを思い出し より大きく笛を吹く。
 やっと彼らは登り直して上がってくる。
 Mhさんが 彼らが下りた尾根より左の尾根にピンクのテープが短い間隔で下に続いているのを目ざとく見つける。
 何となくほっとしてピンクのテープを辿る。
 この時もっと丁寧に地図を見るべきだったが、甘い判断をしてしまう。   (反省2・ポイント8の先 ポイント9で進路変更すべきなのに、9は大堰堤の下に向かっていると重大な読図ミスをした)   (反省3・ピンクのテープをいつの間にか頼ってしまった)
 どんどん下っている時、シルバコンパスと進行方向がずれていくことに気がつく。
 立ち止まり(下山まで見たくはなかった)ハンデイ GPSで確認する。
 軌跡はワラビ谷沿いの破線(小道)に向かっている。
 予定より隣(西)の尾根を下っているではないか。   (反省4・不安箇所では、格好を付けず GPSで現在地を確認する。)
 まだ体力と時間に余裕があると判断し、予定のコースへ修正することにする。
 しかし かなり急な下向きの笹を登り直したくない。
 樹間越しに 進むべき隣の尾根を見ると 水の無い浅い沢を渡ればきれいな草原状の斜面となり 難なく進めそうである。
 数年前歩いた 四国の剣山から三嶺の優しい四国笹の縦走路を思い浮かべる。
赤土山下降
 ところが笹の斜面を下って見ると 沢は一面トゲだらけの野イバラと木イチゴ?に覆われている!!(それも幹の直径が2〜3cm) 押しのけることも出来ない。
 なんとか踏んずけて行くしかない。
 皆さん「アタタ、イテテ」と悲鳴を上げながら越えて行く。
 筆者はトゲの少なそうな所を選んだつもりが だんだん下流に下りてしまう。
 焦るが登り直しが出来ない。
 やっとトゲから逃れたら今度は笹の大藪である。遠目に見た心地良さそうな草原は 密生した笹の葉と 気がついたがもう遅い。
 直上を試みたが押し返される。じゃあとトラバースに変えるが 体の前で束になる笹は簡単には通してくれない。先ほどから足は地に ついていなく、空しく笹の上を滑っている。おまけに山ブドウのようなツルも沢山あり これに絡むと身動きならない。
 無理してなんとか脚を動かしていると 痛い!右足がつった。これを庇いもがいていると 痛い!左足もつってしまった。立つことも 出来ず 横になって脚を伸ばしても曲げても痛く ただただ呻くのみ。 とうとう動けなくなり ビバークを考える。
 他の4名は筆者よりかなり上で 予定の尾根に乗ったようだ。みんなに心配かけてはいけないので 痛みをこらえて兎に角進む。
 この時どんな顔をしていたろうか。
 どうにか尾根形状に上がりついたが 小さな支尾根のようで みんなと合流するには もう一頑張りしなくてはならない。
 元気なSy君が迎えに来てくれる。「もう10m位です」と言う。(笹藪の10mの長かったこと)痛みを堪えてやっと合流する。
 喉の乾きを忘れてたが Gの差し出す冷たいお茶がおいしい。   (反省5・笹藪をあなどっては いけない。今回の場合ピンクテープのルートで下山すべきである)
 やっと一息ついて 下にポイント11の二瘤が見えるのを確認。時間に余裕が無いので下山を再開する。 両足がつった後なので 皆からやや遅れるが どうにかついて行く。
 15時半 やっと ポイント10と11の間の鞍部着。
 予想以上に時間が過ぎている。
 陽が延びたとは云え残り時間も僅かである。
 濃い藪の尾根をたどることを止め ワラビ谷左岸のワサビ田への小道を下ることにする。
 荒れてはいるが少し踏み跡がある。
 ワラビ谷に下った所で 筆者の右足が再びつる。
 下山の目途がついた気の緩みか 皆さんのスピードについて歩けずここで 初めて脚がつっていることを告げる。
 Gが持参していた救急薬品の中から 漢方薬のツムラの68番を出したので飲む。
 まさか自分がこんな薬を飲むことになるとは 想像もしていなかったので残念である。
 痙攣に良く効くと聞いてはいたが 本当に5分後には、痛みが止まった。(長時間の効用は無理である)
 他に 梅干が良いと聞いたが 通常 持ち歩いていない。
 せめてパック入りの干し梅を探し持参しよう。
 筆者はワサビ田から先は数年前に歩いたことがあるので、ここからはリードし山菜を採りながら下山する。
 車に帰り着いたのは16時半。
 どうにか明るいうちに帰宅できそうだ。
 だが よほど疲れていたのだろう。登山を終了しGPSの軌跡取りをOFFにする時、誤操作をしてしまい 本日の苦闘の軌跡を全て消してしまう。こんな事は初めてだ。
 残念だが仕方が無い。 軌跡を楽しみにしていた 皆さん申し訳ない。   (反省6・自分の体力・知識・経験を過信してはいけない。思慮深い判断・行動を心掛ける)
 Gはスパッツを着けていたのに靴の中までササのクズがが入っている ぼやいているが、筆者のスパッツの金具はちぎれて無くなっている。
 同行の皆さんに感想を聞くと、「疲れた」「読図山行は難しい。でも面白かった」「地図を見て想像する地形と実際の地形は違うようにみえる」等であった。
 筆者にとっても あの苦闘の一日が 充実した思い出深い一日であったと 今は心から思える。
 軌跡は消えてしまったが 久しぶりに体力を出し切った大藪山行の思い出は しばらく消えそうにない。
(文・写真 斉藤宗)
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