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犬戻峡(山口県山岳・SC連盟沢登り講習会)
 
 
F5 初挑戦の田中さん
 
 
日 時  2021年8月28日
天 気  曇り
メンバー  江本(CL)鹿野(SL)斉藤(宗)斉藤(滋)
 下関山岳会1名 山口山岳会1名  HC山歩5名
行 程  宇部東IC(6:00)~中国道(六日市IC)~寂地峡駐車場(7:50)~開会式~入渓(9:00)~ 終了地点(16:00)~寂地峡駐車場閉会式(16:50)~寂地峡駐車場(17:30)~宇部東IC(19:30)
 うだるような暑さが続いている。今日も 大海山への最短コースを登っただけで汗びっしょり、あぁ、こんな時冷た~い清流にドボンと飛び込んだらどんなに気持ちいいだろう。
 沢登り講習会の案内があったが、もう何年も参加していない。あれほど沢登りが大好きだったMがいつの頃からか「寒い」と言い出して、すっかりご無沙汰だ。年と共に皮下脂肪は増えているのにモチベーションは反比例、今更講習会に参加できるだろうか? 
 参加条件は《①クライミングの基礎技術を習得している者、または沢登りの経験のあるもの。②新型コロナウイルスワクチン接種を8月14日までに2回終えた者》だ。沢登りの経験はあるが昔の事で自信はない。でもワクチン2回はしっかりクリア。少し気は引けるが、青く透き通った流れのひんやりした光景がしきりと思い浮かぶ。大海山の常連仲間である田中さん(山口山岳会)も参加されるそうだ。よし! 仲間が出来た。年は忘れて参加を決意する。
 寂地峡駐車場に到着、既に沢山の車が停まっている。急いで身支度を整え開会式場に移動する。
 あれ? 若い方が意外に多い!参加者はワクチン2度接種済みの筈なので皆さん年配・・・と勝手に思い込んでいた。若いメンバーに付いて行けるだろうか?少し不安だが今更ジタバタしても仕方ない。
 入渓前にフリクションノットを教わり(本番で上手くできるといいのだが)いよいよ沢床へ・・・冷たい! 久しぶりの感触だ。
 犬戻峡は何度か訪ねているが犬戻しの滝辺りしか覚えていない。どんな光景が待っているのだろう? 元々姿勢が悪く、その上がに股、登山はいつもストック頼り、ちゃんと歩けるかな・・・?先行き不安だが頑張るしかない。
 必死で進んでいると堰堤に突き当たる。右岸をよじ登って越えホッとする。まだまだ始まったばかりだ。しばらく河原を歩いていると滝が現れる(F1)鹿野SLが上で江本CLが下でしっかりと確保、右寄りの岩場をNさん(HC山歩)が難なく登って行かれる。
 あんなに上手くいくといいが・・・。いよいよ私の番、時間を無駄にできないので思い切って登り始める。ベテランに確保されているとの安心感からか意外とスムーズに登れる(私にしては)登れた!と顔を上げると、鹿野SLとNさんの笑顔が目の前に。嬉しい!
F1は流れを避けて
  一見平凡な河原歩きが続く。だが小さな岩でも踏み外せば即転倒になりかねない。6度目の骨折はもう後が無いと慎重に一歩一歩進む。前との差は開くばかりだが姿が見える程度には付いて行こうと必死だ。
 すると釜を持った美しい滝が現われる(F5)大きな岩場に沿ってレースのカーテンのように水しぶきが流れ落ちている。ここを登るのか・・・と眺めていると、あっという間に登り切った両講師からのロープが流れて来る。無理しないで水量の少ない所でもいいよの指示にもかかわらず、皆さん果敢に水しぶきへと突入だ。
 思わずつられ私も釜に飛び込む。全くのカナヅチで1mも泳げないのにロープをグイグイ引っ張って貰いラクチン、ラクチン(背中のザックには2Lの空のペットボトル在中)スイスイ進み滝の取り付きに辿り着く。さぁ、ここからが本番だ。
 顔面に水しぶきを浴びながら水流に負けないよう気合を入れ一気に登りきる。続いて初挑戦の田中さんも嬉しそうな笑顔で上がって来た。頑張ったね、田中さん。
泳いで取り付きへ
 「暑い暑い・・・」と言いながら連日過ごして来たが肩まで水に浸かれ大満足。望みはもう十分果たせたので、ここで終わっても本望・・・だが、そうはいかない。流れに逆らいへつったり泳いだりで見えない終点を目指し先行者の後を追う。
 次に現れたのはゴルジュの奥のトユ状の滝(F7)だ。先日の雨で水量が増えたのか人を寄せ付けない雰囲気で一気に流れ落ちている。以前木谷峡上流部で似たような滝を足を両サイドに踏ん張りながら登ったが滝の形状、水量からして比べ物にならず本流突破は難しい。メンバーが見守る中、江本CLが深緑色の流れに飛び込んで行く。流れに逆らい右岸に辿り着くと手元からロープが流されて来る。
ルート工作中の江本CL
 まずはトップバッターのNさんが飛び込みロープでグイグイ引っ張られて行く。よ~し、今度は私の番、思い切ってドボン!泳ぐつもりがここでも浮いているだけ、申し訳ない。
かなづちでも泳げる?
 泳ぎ着くと右岸の高まきが待っている。先行の鹿野SLに確保され攀じ登って行く。登り切った所でセルフビレーを取り後続を待つが段々と体が冷えて来る。ようやく全員が揃い今度は沢底へと下降だ。
 陽射しの無い淵での待ち時間はさすがに寒い。皮下に厚~い脂肪という服を纏っている私でもいつの間にか膝がガクガク踊っている。あ~エネルギーが欲しい! 田中さんに差し出されたパンを即、口に。一時も速く燃焼させて温かくなりたい。
 時計を外しているが昼はとっくに過ぎていそうだ。どこかでエネルギー補給したいが、ザックから取り出す余裕が無い。そしてついに目の前に現れたF8、左岸の岩壁(10m)を越えない事にはお昼ご飯にありつけない。
 ここもNさんに続き2番手でアタック開始、慎重に攀じ登る。後続のメンバーの視線が気になるが、落ちない事を最優先、スマートには程遠い登り方でどうにかクリア、安全地帯に移動する。
F8 上から休みなく確保中の鹿野SL
 田中さん、Mも登って来て、待ちに待ったお昼ご飯だ。目の前の大きな釜を持ったF9を眺めながら遡行開始後、初めてホッと寛ぐ。
緊張の後の寛ぎ
ホッと一息昼食タイム
 ようやくメンバー全員が揃ったが、江本、鹿野両講師は引き続きF9登攀の準備だ。お昼ご飯食べてる暇なんか無さそう、申し訳ない。下に大きな釜が広がる右岸の斜面(滝滑りを楽しむ人もいるとか)は見るからに滑りそうだ。
 ここでもNさんに次いで2番目に登る。習ったばかりのフリクションノットが役立つ。振り返ると後続のMがスリップ、ドボン! 滑り台を楽しんだ? 年取ると子供に返ると言うもんね。意外と手ごわかったF9も全員完登、ここで時間的に遡行終了となり遊歩道へと上がる。
 所々遡った沢をかなり下に眺めながら長~い林道歩き(疲れてそう感じた)で駐車地へと帰り着く。予定時間オーバーは後期高齢者2名(我が家)の所為かもしれない。いろいろ迷惑をかけたと思うが11年ぶりの沢登り、本当に楽しむ事が出来た。両講師、メンバーに改めて感謝だ!
最後の難関に挑む
 《帰宅後に》
 「これ見て」 自分の沢靴をひっくり返して差し出したM。なんと左右とも底がツルツル・・・大事なフェルト部分が無い!?
 11年も放置していたので出かける前に、入念にチェックした筈。Mの話ではF1を登る時、ツルっと滑ったらしく、「バランスが悪うなったが年取った所為かの~と思うちょった」との事、その時既に剥がれていたかもしれない(後日聞いた田中さんの話では剥がれた底が浮いていたそうでM自身も目にしていた・・・自分の物とも知らずに)
 以前、前触れもなく登山靴の底が突然、左右とも剥がれる場面に遭遇したが、沢靴でも同じ事が起こるのだ。「どうりで何度も滑ったわけか、おかしいと思うちょった」 おや! そのセリフ、底が無い沢靴でもどうにか歩けた・・・とでも? いやいやそんな問題じゃない! そんな危険な沢靴で延々歩いていながら全く気付いていない…それこそが本当に恐ろしい! とにかく無事でよかった!! 思わず胸を撫でおろし心から神に感謝した。
 
( 文:斉藤(滋)   写真:斉藤(宗) 斉藤(滋) )
    
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