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石見冠山(島根県)
 
2人きりの林
 
 
日 時  2020年10月29日
天 気  曇り
メンバー  斉藤(宗)  斉藤(滋)
行 程  国民宿舎さんべ荘(8:05)~邑南町野原谷登山口(9:40-9:55)~メタセコイヤ巨木(10:30)~たいのすけ鈩跡地(11:13)~冠山山頂(12:06)~P863m(12:13)~冠山山頂(12:20-12:46)~メタセコイヤ巨木(13:47)~野原谷登山口(14:13)
 宿で朝食後、大急ぎで石見冠山に向け出発する。道路地図を見て目的地までほぼ直線(最短距離)に走れると思っていたが、その経路は道幅が狭く離合困難との事、大きく迂回することに。三角形の二辺どころか四角形の三辺を走らなくてはならない。時間がかかるが安全第一、仕方ない

 石見銀山、大江高山と気になる名所を通り抜け冠山の麓までやって来る。たまたま出会った地元の方に登山口への経路をお訊ねすると、幸運にも常日ごろ登山道の整備などしておられる方だ。今日は地区の行事の準備中だとか、忙しい手を休め、親切に応対してくださる。良かった。だが、お礼を言って立ち去ろうとしたその時、背後から追っかけて来た言葉に思わず「エエッ!」と絶句! 「最近、熊4頭仕留めたんで気をつけてください!」

 かなり有名な山と思っていたがなんと寂しい登山口、足元はアスファルトの道路だが、確かにいつ熊が出て来てもおかしくない。行くか、止めるか・・・身支度が中々進まない。だが長年の希望かなって、やっとここまで来たんだ、今更・・・。Mの特大の鈴と笛をフル活用するしかない。意を決して歩き出す。
薄暗い林に届く陽射し
 緩やかな植林帯を数10mおきに笛を鳴らして進んで行く。薄暗い登山道の脇には立派なシダが覆いつくすように繁っている。小さな流れを何度か渡り徐々に高度を上げていく。見通しのきかない風景に熊除けの笛の音が響き単調な時間が過ぎて行く。アッこれか? ようやく第一ポイントのメタセコイヤの大木までやって来る。確かに幹回りは大きいがツーンと立っていて樹というよりオブジェという感じだ。もっと離れた場所から眺めたら堂々として素敵かもしれない。
メタセコイヤの大木
 変化の無い植林帯の登りが続く。ずい分昔の話だが、家族で三瓶山に登り山頂からひと際目立つピークを見つけた。綺麗な三角形、《石見冠山》との初めての出会いだった。秀麗なその姿に惹かれいつか登ってみたいと思っていたがなかなかチャンスは巡って来なかった。いや、今からうん十年前(私はまだ現役で勤務中)、Mは女性パーティーに誘われ黒一点で登っている。その時のメンバーのお1人に何度か山でお会いしたが、そのたびに「石見冠山は良かったね~」と聞かされた。張り合う気持ちは全くないが登ろうと何度か誘ってみたものの「大した山じゃない」の一点張りのM、取り合ってはくれなかった。余程いい思い出(?)でもあったのか・・・。つまらない事を思い出しながら歩を進め、足場の悪い急坂にさしかかる。こんな所でもこまめに「ピーピー」と笛を鳴らすM、頬の筋肉が疲れてはいないだろうか? クマが熊を怖がっている(若い頃勝手にクマとあだ名をつけていた。ずんぐりむっくりの体型だったから)
急坂を登る
 傾斜が更に増してきてロープが延々張られている。足の運びは大幅にペースダウン、なんとか峠に登り着く。ここが《たいのすけ鈩跡地》目だつ標識が立っている。反対側に下れば冠山名水があるとか、湧き水は大好きだが疲れて下る余力がない(頑張って行ってみれば良かったと今となっては残念・・・)一休み後、左に大きく方向転換、尾根伝いに登って行く。植林帯から雑木林となり赤や黄色に色づいた木立が美しい。
ようやく明るい尾根道に
 更に岩場交じりの急登が続く。転んでしまえば即骨折になりかねない(6度目は再起不能)こんな所に救急車は来ないと慎重に登って行くと大きな岩場が現れる。遥か右方向に山頂らしきピークが覗いているがまだまだ先は長そうだ。
やっと見えた山頂(?)
 思わずロープにしがみつきたくなる急坂をやっとこさ登りついに冠山山頂に立つ。だがどうしたことだろう? 念願かない、やっと憧れの頂に立ったのにピースもヤッターも出てこない。少し期待外れ? 《陸の松島》と言われる絶景(田園地帯に点在する多数の小丘)がまるで見えない。雲の合間に青空が覗いているのに眼下を覆う意地悪いガス・・・。南側の863ピークまで足を運んだが無論ガスは居座ったままだ。残念だが仕方ない。
《陸の松島》はガスで見えない
 山頂まで引き返し、昼食タイム。《陸の松島》は相変わらず霧の中。欲を言えばきりがない。登れただけでも良しとしよう。後は怪我をしないように下るだけだ。帰りも熊に出会いませんように!(熊にも人にも出会わず無事下山)
後期高齢者には厳しい下り
石見冠山トラック図
 山旅を終え
 月の前半同様、後半の山々もどこも静かでコロナの恐怖を感じる事はなかった。我が家が選んだ山は、たまたま登る人が少なかったのか、コロナ禍のせいなのか? いずれにせよ、久しぶりに出かけた山々はザワザワした今の世にかかわりなく、いつも通りの佇まいで優しく迎えてくれた。地元の大海山通いで過ごしていた日々、新たな力を貰った山旅だった。
 
 ( 文:斉藤(滋)  写真:斉藤(宗) 斉藤(滋) )
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