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足谷川ゴルジュ(愛媛県西赤石山)
 
 
日 時  2020年9月22日(火)
天 気  晴れ
メンバー  池本、内田、鹿野(会員外)
行 程  新居浜~鹿森ダム~遠登志橋~入渓6:50~取水口12:05~赤い橋13:15~出渓14:15~登山道~下山~新居浜IC~今治~しまなみ海道~山口南IC~山口
 前日の瀬場谷遡行の後、風呂に入って明るいうちから宴会開始。至福の時を過ごすが、いつものように意識のないまま撃沈し、気がつけば朝を迎えていた。それでも6時に起きて、無理やり朝食を詰め込み、遠登志橋へ向かう。名の知られた沢が市街地からわずか10分程度の距離にあることに驚いた。
 二日目は足谷川。地形図では小女郎川と記載されるが、日本登山体系では小足谷川と区別するため本谷川と呼ばれ、「これほど悪い谷は、四国には他にないと思われる」とある。事前にいろいろ調べた記録でも、特に前半のゴルジュは厳しそうだ。二日酔いで遡行することに不安はあるが、準備をしてから遠登志橋を渡ったところで入渓した。
 綺麗な水はいかにも冷たそうだが、それよりも薄暗いゴルジュに圧倒される。心の準備もないまま、いきなり激流を泳がされ、厳しいショルダーで滝を越えていく。
いきなり厳しいショルダー
 岩質は伯耆大山の甲川に似ている感じだが、ラメが含まれるのか、何だかキラキラしており珍しい。ただ、じっくり岩を観察する余裕もなく、最初から必死になって進むと、大きな釜を持つ二条の滝が現れた。
 激しい水流をものともせず、ここは鹿野が一発で突破。お見事!内田も続くが、水流に押し戻され、結局、鹿野からのスリングで越えた。入渓してまだ間もないというのに相当に消耗させられる。
見事に一発で取り付くことに成功
 釜に湛えられた水は青々とし、滝は白い激流となって吐き出される。両岸はますます深くなり、ゴルジュは途切れる気配がない。両岸が切り立った中に現れるトユ状の滝は、右壁を苦労してフリーで越えたと思ったら、その奥には見るからに無理そうな滝が立ちふさがり、思わずがっくり。仕方がないので、少し戻って、左岸のルンゼから高巻いた。
トユ状の滝は右壁を越えた
 この沢はゴルジュが発達しており、両岸の高い岩壁に挟まれて、高巻きも容易ではない。かなり巻き上げられて、懸垂で降りる際、次の懸垂の支点がとれるのか、ちゃんと下までロープが届くのか、いろいろ心配しながらも2ピッチで沢床に復帰。無事に巨大なテーブル石に降り立った。
 懸垂で降りてきたロープを抜く際も、自ら退路を断つような不安を感じてしまう。この先、登れない滝が出てきた場合、高巻くことができなければ、降りることもできず、進退窮まることになるかもしれない。
懸垂の度に緊張する
 それでも、前に進むしかない。陽の当たらない深いゴルジュの中を、半分ドキドキ、半分ワクワクしながら進んでいくと、折れ曲がった先に大滝が現れた。
 これまた見るからに登れそうにないので、ここは右岸の苔だらけのジェードルに取り付いた。池本がトップで越えるが、よくロープを出さずに登ったものだと思う。ロープを出してもろくに支点はとれなかっただろうが。
苔だらけのジェードルを登る
 その後もしっかり泳がされながら、登れない滝は高巻いて先へ進む。相変わらず深いゴルジュが続き、緊張の糸が緩むことはない。
 水温は低いが、ウエットスーツを着ていたのと、緊張のせいかあまり寒さは感じなかった。
深いゴルジュが続く
 気がつけばゴルジュの中に陽の光が差し込んでいる。既に時間は11時半近い。入渓してから4時間半が経過しているが、目標地点まで半分も進んでいないことに愕然とする。この沢は、滝を越えるのも高巻くのもどちらも厳しく、時間がかかってしまう。
陽の当たる淵を泳いで取り付く
 陽の光の暖かさを感じられるようになった頃から、ゴルジュの底は次第に広がりを見せ、河原のような箇所も出てきた。どうやら難所を越えたようで、ようやく遡行ペースも上がっていく。
 すると、突然、小さな石組みの堰堤らしきものが現れたと思ったら、すぐ上にレンガ造りの取水口が取り付けられているのが目に入った。こんな深い沢の中に人工物があることに驚く。一体、どこにつながっているのだろうか。
突然現れた取水口
 その後も登れない滝が出てくるが、前半と異なり、容易に巻くことができる。明瞭な踏み跡があったり、遠登志橋と東平をつなぐ登山道があったりと、過去に人の手が入った領域なのだろう。古びた石組みや赤い橋など、銅山の遺構も姿を見せた。
 登れそうな滝では遊んだりして遡行を続けるが、次々に現れる滝にうんざりしてきた頃、唐突に沢が終わりを告げた。
 沢の水は、突然、出現した巨大な暗渠から吐き出されていたのだ。これほどの暗渠を建造し、この沢の水を通すのに、どれだけの労力がかかったのだろう。ここで行われた人の営みの興隆と衰退に思いを馳せ、3人とも思わず無言になる。
 最後に、ホールド・スタンスの乏しい岩を鹿野と協力して登り、暗渠の中に入ってみたが、中は完全な暗闇で、石組みの上を流れる沢の音しか聞こえなかった。
沢の終了点
 下山は暗渠手前の右岸の石組みを登り、住居の跡らしき場所に出る。そこから沢沿いにつけられた道を通って、遡行中に下をくぐった赤い橋を渡り、駐車地点に戻った。遡行に7時間半近くかかった距離は、登山道では1時間だった。
 これほど深いゴルジュは初めてで、これまで自分が経験した中では一番難しい沢だと思われる。
 久しぶりに不安を抱きながら、緊張感の途切れない遡行となった。無事に最後まで辿り着けたことについて、強力なメンバーに感謝したい。
(文:内田、 写真:鹿野・内田)
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