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八ヶ岳
 
 
山行日  2020年1月2日(木)~4日(土)
メンバー  高田、池本、有松、内田
行 程  【1月2日】 晴れ
 山口~防府東IC~諏訪南IC~美濃戸口~赤岳山荘駐車場~赤岳鉱泉~裏同心ルンゼ取付~大同心基部~大同心稜~赤岳鉱泉

 【1月3日】 ガス及び強風
 赤岳鉱泉~行者小屋~文三郎尾根~赤岳主稜取付~赤岳稜線~赤岳山頂~文三郎尾根~行者小屋~赤岳鉱泉

 【1月4日】 ガス後晴れ
 赤岳鉱泉~行者小屋~阿弥陀岳登山道~北稜取付~阿弥陀岳山頂~阿弥陀岳登山道~行者小屋~赤岳鉱泉~赤岳山荘駐車場~美濃戸口~諏訪南IC~防府東IC~山口
 自分にとって初めての八ヶ岳。ずっと行ってみたいと思っていたが、今回、何とか家族の了解を得て、冬山合宿に参加させてもらうことができた。
【1月2日】裏同心ルンゼ
 1月1日の20時頃に山口を出発し、ひたすら高速道路を東へ。道中、特に渋滞もなく2日の5時頃に赤岳山荘駐車場に着いた。
 暗い中、準備をしてから、ヘッドライトを付けて出発。だらだらと長い道を2時間で赤岳鉱泉に到着。早速、テントを張って、落ち着く間もなく裏同心ルンゼへ向かう。
 大同心沢を過ぎ、次の沢を少し進むと裏同心ルンゼF1が現れた。2人組がトップロープで練習している。先に行かせてもらえないかお願いしたところ、快く譲ってくれた。
 トップの高田が巧みにスクリューで支点を作りながら抜けた後、自分もフォローで登る。高田のバイルは一発で氷に決まるのに、自分は何度も氷を叩いて砕いてしまう。なかなかアイスクライミングは難しい。
裏同心ルンゼF1を越える高田
 天気は快晴で、前方には青空を背景に大同心がそびえている。素晴らしい光景にテンションは上がるが、ルンゼの中は風が吹き抜けるので寒い。
 F2以降も高田をトップに順調に登る。F5まであると聞いていたが、全部で4つの滝を越えたと記憶している。一つは雪に埋まっていたのかもしれない。最後は大同心を見上げながら、その基部を右にトラバース。振り返ると得も言われぬ眺望が開けていた。
目の前には大同心がそびえる
 日射しが強いため、サングラスを取り出す。北アルプスだろうか、遠くに白い山々が連なっている。抜けるような青空の下、存分に光景を楽しんだ後、大同心稜から下山した。
 テントに戻って、早速の乾杯。自分は寝不足と疲れで早々に撃沈してしまったが、食料担当の有松が用意してくれた夕食は絶品だった。
 【1月3日】赤岳主稜
 二日目、目覚めると昨日のお酒が残っており、頭が重い。それでも朝食をとった後、準備をしてから出発。
 今日は、高田&池本が石尊稜を、有松&内田が赤岳主稜を登る予定だ。赤岳鉱泉から少し進んだ橋のところで高田&池本と別れ、自分たちはそのまま直進。中山乗越から行者小屋を過ぎ、文三郎尾根に入る。
 高度を上げるにつれガスの中に入り、風が強くなってきた。早くも下山する人とすれ違うが、皆さん全身が凍てついている。
 実は今回、恥ずかしながら赤岳主稜ルートについて資料をほとんど読んでいなかった。高田からもらったルート図だけを頼りにしていたので、視界が悪い中、取付が分かるか心配だったが、登山道を外れ、無事にチョックストーンのあるチムニーに到着。トレースはなく、今日は誰も入っていないようだ。いよいよ登攀開始。
トレースのない取付
 チョックストーンはそうでもないが、その後のチムニーを越えるのが気持ち悪い。氷雪で見えなかったのか、もっと支点があるかと思っていたので、気を引き締める。
 今回のルートは最後まで、終了点以外では本当に悪い箇所しか支点が見当たらなかった。
 ますます風が強くなり、さらに視界も悪化する中、有松とつるべで順調にロープを伸ばす。下部の岩壁を越え、中間の岩場を過ぎ、雪原を登ると、前方には上部岩壁が見えてきた。
安定した登攀を見せる有松
 ここで問題発生。上部岩壁の中間あたりにスリングが2本、さらにずっと右寄りには10m以上の長いロープが垂れており、どちらが正しいルートか分からない。後から知ったところによれば、上部岩壁は右端まで進んでから凹角を越えるそうなのだが、中間地点で一段上がったところに終了点があったことから、右端よりずっと手前で岩壁に取り付いてしまった。
 傾斜のきつい3~4mのフェースで、ホールド・スタンスがなく、とてもフリーでは登れない。2本のスリングのうち、左を使うにはバランスが悪く、右は有松が引っ張ると簡単に切れてしまった。切れたスリングが付けられていたハーケンを支点として何度テンションをかけただろう。最後はアブミ代わりのスリングをかけ、そこに左足で乗り込んで、ピッケルとバイルの切っ先を岩のわずかな突起にひっかける。まさかの厳しいA1セクションに痺れながら、何とか抜けることができた。
 そしてフェースを越えたものの、そこからのルートがまた分からない。登れそうな箇所を探して、右上するバンドを右往左往した挙句、たまたま一番奥のルンゼの基部に終了点らしきスリングを発見。二人が立てるほどのテラスでようやくピッチを切ることができた。このピッチを抜けるのにかなりの時間を費やしてしまった。自分のルートファインディングが甘いために、強風に耐えて凍えながら長時間ビレイしてくれた有松に申し訳ない。
 狭いテラスで身体を入れ替え、傾斜のあるルンゼを有松が登る。出だしで右にハーケンがあるのみで、抜け口では支点が取れないまま、バランスをとって膝で乗り上がった。無事に抜けてくれと祈る思いで緊張のビレイ。ルンゼを抜けるとようやく傾斜が落ち着いた。
ようやく核心の岩壁を抜ける
 風はますます強くなり、吹き上げられる雪の粒が顔に当たり痛い。そこから3ピッチほどロープを伸ばすと、ふと鉄のポールが目に入った。登山道だ!
強風に巻き上げられる雪粒が痛い
 相変わらず風は強いが、無事に赤岳主稜を抜けたことに安堵する。
 有松と共に赤岳山頂に立ち、固い握手を交わす。後は安全地帯へと急ぎ、文三郎尾根を下った。テントに着いたのは15時半過ぎ。高田と池本に心配をかけてしまい反省しきり。けれど、この日のお酒は格別だった。
 【1月4日】阿弥陀岳北稜
 三日目の最終日は、高田の提案により4人で阿弥陀岳北稜に行くことに。初心者向けのルートだそうだが、朝イチの空はガスに包まれている。昨日のような天気にならないことを願って出発。
 行者小屋を過ぎて、今日は文三郎尾根に入らずに、阿弥陀岳への登山道へ向かう。道は中岳沢の中に付けられているようだ。
 北稜への分岐が分かるか心配だったが、登山道から分かれた明瞭なトレースがあった。手前の尾根を越えて、北稜に取り付く。
姿を現した阿弥陀岳北稜
 ジャンクションピークのすぐ後ろに上がり込み、次第に傾斜が出てくる尾根を進むと、岩場に出た。2人組の先行パーティーが取り付いている。気が付けばガスが晴れて、青空に囲まれており、申し分のない条件だ。
 我々も準備をしてから登攀開始。まずは有松&内田が取り付いた。岩稜が2ピッチ続くが、ホールド・スタンスは豊富にある。順調にロープを伸ばした後、コンテに切り替え、少し歩くと一般登山道に合流した。その先が山頂だ。
下方には行者小屋が見える
 高田&池本が続き、山頂で仲間と握手を交わす。雲一つない青空の下、ぐるりと絶景が広がっている。気分は最高だ!しばらく仲間と一緒に素晴らしい時間を堪能してから、山頂を後にした。下山は一般登山道を使い、中岳沢を下った。
仲間と喜びを分かち合う
 赤岳鉱泉まで戻り、テントを撤収してから下山開始。赤岳山荘までの長い歩きが疲れた身体に辛かった。麓でお風呂に入り、ラーメンで腹ごしらえをした後、山口までの長い帰路に就いた。
 今回、初めて八ヶ岳の冬山合宿に参加し、非常に内容の濃い山行をすることができた。快晴の下での快適な登攀や荒天の中の厳しい寒さなど、十分に八ヶ岳を味わうことができたと思う。
 頼りになるリーダーの高田をはじめとして、経験豊富な池本、食料担当をしてくれた有松に改めて感謝したい。
(文:内田、写真:高田・内田)
      
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